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#67

盲ろう者として生きて 指点字によるコミュニケーションの復活と再生

福島 智  明石書店 (2011)

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 盲ろう者とは、目が見えないだけでなく耳が聞こえない人で、有名な方ではヘレン・ケラーという方がいらっしゃいますね。

 福島さんは視覚は9歳で、聴覚を18歳で失っています。指点字という手法で失ったコミュニケーション手段を獲得するまでを記したのがこの本です。
 特に感心なのが、「メモ魔」であるという彼の母で、彼女の膨大な量のメモが、その後の執筆の重要な資料として大変役立ったようです。

 福島さんはその様子を博士論文としてまとめるのですが、私のような健常者では想像もできない世界を手探りで通り抜けていっている様子がよく分かりました。
 母の心配をよそに、視力を失いつつありながらもなお福島さんは子供の頃をわんぱくに生き、それを受け止め支える母の様子はとても気丈に感じました。母は子が自殺をするのではと案じたようですが、当の本人は一時絶望しつつもそんな気はさらさらなかったようで、その後前向きに生きてゆきます。この母あってこの子ありといった感じですね。

 福島さんが記した盲ろうについて、以下のように書いているのが印象的でした。
「光もなく音もない。空気と栄養だけはあるから生きてはいるけれど、情報は一切得られない。唯一、通信によってのみ、はるかな地球と交信できて、仲間の存在を確かめられ、希望がわく」

 か細いコミュニケーションでつながることの孤独さ、そしてそのつながりの大切さ。私たちが当たり前に持っているものについて、今一度考えさせられるのです。


2011-11-20

カテゴリー:医療と健康福祉

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