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#100

【読書】クルマ社会・7つの大罪 アメリカ文明衰退の真相

増田 悦佐 PHP研究所 (2010)

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 アメリカ社会の問題、例えばコミュニティの崩壊、格差社会の助長、味覚の鈍化などは、自動車社会の発展によってもたらされている、という視点で解き明かした、面白い視点の本です。

 今のアメリカは自動車無しでは成り立たないそうですね。まあ、そんな話はよく聞きますが、その影響は想像以上の所まで及んでいるようです。たかが一交通手段なのに、と思いますが、読んでいくと、なるほど、と思ってしまいます。

 例えば、「大衆社会の格差社会化」について。アメリカでは自動車は「究極の見せびらかし商品」であり、それにより格差階級が出来ているが、日本の自動車は無個性と言われるが安全性や耐久性を追究したので「ミソ汁のように存在を感じないほどでしゃばらない名車に育っていった」と。

 あるいは、家族の孤立化が進んだこと。鉄道のように駅や車内で他人と触れ合うことがなく、自動車に乗ってしまえばほとんど他人と接触せずに一日を終えてしまいます。家族単位で孤立し、鉄道のように「ゆきずり」の人たちとのコミュニティは無くなってしまった。

 ざっと読むと、自動車の普及は極度の個人主義を助長してしまい、そのおかげで様々なコミュニティやモラルが崩壊したせいで、個々の生活にもその影響が及んで様々な弊害が生まれてしまった、ということが言えるようです。

 一番興味深かったのが、味覚との関係。へえ、何で味覚が自動車の普及と関係あるの?と思いましたが。
 昔のアメリカは今ほど味覚が鈍くはなかったと言います。それが変わってしまったのは車のおかげ。つまり、車が普及して遠出をするようになり、知らない地でもとんでもないものを食べさせられなくて済む「ファーストフード」がもてはやされるようになったというもの。また、行き帰りの車の中で食べられるものはどうしてもファーストフードのようなものになってしまう。

 まあ、ちょっとこじつけっぽい内容もあるし、これらの社会問題は何も自動車の普及ばかりが原因では無いと思うのですが、こういう見方は面白いなあと思いました。

 最後に増田さんは、交通は今後省燃費の方向へ向かうだろう、これからはトラック・二輪車・軽自動車の部門を持っている自動車メーカーが生き残るだろうと予測しています。鉄道にしてもエコカーにしても日本のお家芸ですから、ずっとこの高い技術力を堅持していけるといいですね。


2012-2-4

カテゴリー:科学技術世界の文化と歴史

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