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#157

【読書】恐山 死者のいる場所

南 直哉 新潮社

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 私も学生のころ、恐山に行ったことがありました。私の場合は旅の一環として立ち寄っただけなのですが、「恐山」というおどろおどろしい名前なのに実際は何か心落ち着くところで、また来てみたいと思った記憶があります。

 ところで南さんは恐山菩提寺の院代(住職代理)という立場の方ですが、恐山とはどんなところか、外側から見ただけでは分からない恐山について語ってくれます。

 恐山というのはイタコさんという、死者の霊を呼び出し仲介してくれる(と言われる)方が多くいらっしゃる所として有名ですが、実はお寺としてはイタコさんとは何の関係も無いのだそうですね。
 言ってみればお寺の敷地でイタコさんが勝手にいろいろやっている、といったところですが、昔から続いていることなので特に排除もしないということらしいです。
 でも、南さんのお話からは、その死者の霊を取り次ぐというイタコさんの話の真偽については「分からない」ものの、イタコさんを頼って親しい人の死を受け入れる姿を尊重しているように見えます。

 南さんは、恐山は「パワー・スポット」ではなく「パワーレス・スポット」だと言います。パワーを発するところではなく、「何も無いところ」。だから来た人はいろいろなものを放出できる。

 なるほど、と思いました。だから私が昔来たとき、何か安らぎのようなものを感じたのか、と。
 死者との決別をしきれず、イタコさんを頼ってきた人は様々な想いをはき出して、そして気持に区切りをつけることが出来るのでしょう。

 亡くなる方が肉体的に死ぬからといって、周りの人がそれと同時にその死を受け止めるとは限らないし、恐山はそんな多くの想いに終止符を打つために用意された場所なのだなあ、と感じました。

2012-6-28

カテゴリー:宗教・信仰日本の文化と歴史

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