#192

　荒木さんのファンならお馴染みですが、荒木さんはたびたび自邸のバルコニーで写真を撮っています。

　このたびの自邸の取り壊しに伴い、荒木さんがバルコニーで撮った写真を集めたのがこの本です。

　こうして一連で写真を並んでいるのを見ると、単なる「バルコニーで撮った写真」を超えていますね。

　まだきれいなバルコニーで新婚時に妻の陽子さんと楽しく過ごした日々、その後家族となったネコのチロの様子、バルコニーにモノが増え、それが時間とともに変化していく様子、そして広い空。
　最愛の陽子さんを亡くした後の、残された家族チロが無邪気にバルコニーで遊ぶ様子、そしてそのチロも亡くなり、心の隙間を埋めるかのようにバルコニーに増殖する人形、モノ・・・

　まさにこのバルコニーという狭い空間でのささかやな出来事の数々が荒木さんの人生の縮図だったわけです。

　この本を出したのは、そんなバルコニーのある生活を思い出として完成させ、名残惜しい気持にけじめをつけ、新たな荒木経惟として再出発する気持があったのではないか、そんな気がします。

2012-12-1
カテゴリー：写真集

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