#230
【読書】ドキュメント福島第一原発事故 メルトダウン
大鹿 靖明 講談社
福島第一原発事故。政府と電力会社、そしてそれを取り巻く業界や関係者たちの間で何が行われていたか、事故発生から当時の内閣であった菅政権が崩壊するまでを描いたドキュメンタリー。
事故が起きて予想外の事態に戸惑う政府、事故を必死に食い止めようとする現場、なるべく事を穏便にすませ損害を少なくしたいとする電力会社本店と国、持論を繰り返すだけの研究者。
それまでいろいろな媒体で報じられてきたこれらの一連の様子が、大鹿さんが接した125人の証言から構成された克明な記録で、まるでそれらが目の前で行われているかのように鮮やかに甦ります。
特に、当時は菅政権の業界寄りとも見られた対応は、本当に何とか被害を少なくし国民の側に立ちたいとする思いと、なるべく大事にしたくないとする政府側の思いの間で揺れ動き、それでも、利権を失いかねない電力会社や「原子力業界のドン」である経産省からの巻き返しに必死で抵抗していたことが分かりました。
結局、原子力に関わる業界と官庁、関係する野党、それに呼応したマスメディアなどの反撃により菅政権は疲弊し、崩壊してゆきます。もはや国民は蚊帳の外に置かれたのでした。
すべてこの本の内容のとおりではないかもしれませんが、これからの原子力のあり方を考える一つのヒントになります。
2013-3-22
カテゴリー:原爆・原発・原子力/日本の社会問題/政治と行政