#309
古寺巡礼 (愛蔵版)
土門 拳 土門 たみ 第一アートセンター 小学館 (1998)
土門拳さんといえば、「木村伊兵衛賞」に並び「土門拳賞」という写真賞があるくらいの、写真界の巨匠であり、ここで私が土門さんの写真についてどうこう言うのも少々気が引けますが・・・
この「古寺巡礼」は、かつて土門さんが五冊にわたり日本中の仏像や寺社などを撮影したもので、この本ではそれらを「愛蔵版」という廉価版としてまとめたものです。
そのほとんどがモノクロの写真で、迫力に満ちたものです。
仏像のあるものは全身を写し、あるものは横から写し、あるものは顔をクローズアップし・・・
そして計算されたライティングにより生まれる陰影がもたらす力強さ・・・
これらの仏像は、今にも動き出しそうな生命力を感じます。
彫り跡の感触、シルエット、コントラスト。
これまでの歴史の過程で一部形が崩れてしまったものでさえ、未だに命が宿っているようです。
寺院の建物や庭、その周辺の風景を写したものは、その写した対象そのものというより、その場に漂う空気感が切り取られたようです。
これらの写真を撮影したのが、今から約60〜40年前。まるで、つい最近写したかのような空気感は、時間の流れが止まったかのようにさえ感じます。
2014-1-1
カテゴリー:写真集