#371
逸話に学ぶ茶室と露地
飯島 照仁 淡交社 (2014)
私はお茶をたしなみませんが、興味があり読んでみました。
文字通り、昔のお茶にまつわる書物の中に記されている茶室や露地についての逸話を集めたものです。
例えば茶室でいえば、茶室の建て方から畳・床の間・柱などのディテールにまで話が及び、著名な茶人たちが茶室について語ったりアドバイスしたりしますが、特に千利休が語る言葉の切れ味が鋭くて素晴らしい。お茶を知らない私のような人間でも「ほーっ」と思ってしまいます。
茶室や露地のような「形」からお茶の本質を探るつもりで読んだのに、お茶を知らずして茶室や露地のことなど分からない、という当たり前の「壁」に自らぶち当たってしまいましたが、でも昔にもお茶のことを知ってつもりで形から入りがちだったという人たちがいたんですね。
飯島さんは、『「客に対して亭主が最善の心配りをする」という茶の湯の本質が、茶室と露地の数々の意匠を生み出したのだと、再認識させられ』たと書いていますが、茶室や露地というのは亭主が持つ「世界観」を体現するという面もあり考え方もそれぞれ違うものだなとも感じました。
茶室のとある部分について利休と織部では言っていることが逆のこともあり、それは二人の世界観に違いがあるところから来るのだなあと思いますし、この人たちにとって茶室や露地はこの二人が持つ世界を体現し、客に浸ってもらうことが目的であるからしてディテールの細かいところは結果としてそうなっているだけだ、ということが分かります。
私がこれを通して読んでふと思い出したのは「ディズニーランド」ですね。お客さんを夢から覚めないようにするために、隙間の見せ方にも手を抜かない。
通じるものがあります。
茶室や露地そのものよりもそれらを巡る古人たちのやりとりの光景がまぶたに浮かび、のどかな空気が流れます。
2015-5-7
カテゴリー:日本の文化と歴史/建築・造園