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#40

峠と旅情(鉄道的解釈)

 今回は鉄道ネタで。

 ここ何週間か、何を思ったか立て続けに鉄道のdvdを見てます。

 運転中の列車の運転室から見える風景を映した「前面展望ビデオ」と呼ばれるもので、要はそれで列車の運転士の気分が味わえるというシロモノです。

 まあ内容はというと、ひたすら線路が映っているだけで、そのジャンルの鉄道マニアにはたまらないのですが、ヨメには「何が面白いのか分からない」と言われてます。

 ざっといろいろ見ましたが、やはり峠ものがいい。一押しは何と言っても碓氷峠でしょう。(風景的にはどうってことないんですが)

 群馬県の高崎から軽井沢・長野を通り新潟県の直江津までの区間を信越本線といいますが、この線の横川ー軽井沢間というのは碓氷峠という峠があり、登山鉄道以外の一般の鉄道では日本一勾配がきつかったところですね。

a0040_1.jpg峠に向かって登っていく線路はトンネルの連続です。
 この区間は廃止直前は所要時間わずか20分前後まで短縮されたのですが、このたった一駅区間のために明治45年には早々と電化され、その後ここを通るためだけの専用の特急・急行用車輛が開発され、やはりこの区間専用の電気機関車が特急・急行のお尻を押し、または下ってくる特急・急行の先頭にたってスピード抑制しました。

 この短い区間のためにそこまでしたのはなぜか。
 戦前は鉄道は物資を運ぶ施設として軍事的に重要だったわけですが、いち早く鉄道が開通した東海道線は海沿いであり軍事的に見ると海から攻撃されやすいという弱点があるがために内陸の信越線を重要視したと何かで読んだことがあります。
 そしてまた関東と信州・北陸をむすぶ大動脈であり、戦後は大量の貨物の他、多くの旅客をさばくために長編成の特急・急行列車をこの勾配のきつい峠を通す必要があり、そのための専用の車輛が開発されたのでした。

a0040_2.jpg右に見えるのが、碓氷峠を下ってくる特急あさま。この区間専用のEF63という機関車2両が先頭にたって、スピード抑制してます。
 しかし1997年、もっと効率的なルートに建設された長野新幹線が開通し、この区間を行き来するのに多大な労力やコストがお荷物だったこの横川ー軽井沢間はさっさと廃止されてしまい、普通列車はバスに転換させられてしまいました。
 横川駅の北に位置する横川運転区という鉄道基地は「碓氷峠鉄道文化むら」として鉄道の博物館になってしまいました。

a0040_3.jpgこのあたりから先は廃止され
a0040_4o.jpgこんなふうになってしまいました(碓氷峠鉄道文化むらウェブサイトより)。車庫だけがそのまま利用されてますね。

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 いまでは新幹線が碓氷峠をいとも簡単にぴゅーっと通ってしまいますが、便利さと引き換えに旅のドラマというのは無くなってしまいました。


 それからもう一本。福島ー山形県米沢間の板谷峠。
 ここは峠近くに4つほどスイッチバックが存在し、やはりこの区間を通るディーゼルの特急・急行列車を補助するためのこの区間専用の強力なパワーのEF71という電気機関車が開発されたのですが、まもなく電車の特急列車が導入され、あっという間にお払い箱に。
 しかたなく普通列車の客車を2~3両引っ張るという仕事を細々と続けたわけですが、いかにも力を持て余したといった感じ。

a0040_6.jpgこんな感じです。
 板谷峠といえばスイッチバック。本線の脇の方に駅があります。そのため、このあたりだけ普通列車は行ったり来たりをして坂を登って行きます。

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 このビデオでは、ちょうど山形新幹線開通に向けて、線路を改修していたころの映像を収録しています。
 JRの線路の規格は「狭軌」と言います。狭軌に対して標準軌・広軌などというものもあるのですが、世界の多くの国で採用しているのが標準軌です。新幹線はこの標準軌を採用しているのです。

 線路の幅は狭いよりも広いほうがスピードを出せるので、新幹線は全て標準軌を採用しているのですが、山形新幹線は福島から先は在来線を走行するという形をとっています。(在来線と別に新幹線の専用線を作る「フル規格」に対し、在来線に走れるようにしたのがいわゆる「ミニ新幹線」。山形新幹線と秋田新幹線がそれに当たります。)
 でも、在来線の狭軌に標準軌仕様の新幹線の車輛は走ることができません。で、どうしたか。
 何と、この山形新幹線を走らせる在来線の区間は、狭軌から標準軌に直しちゃったんですね。

a0040_8.jpg右が従来の狭軌、そして左が新幹線を通すために標準軌に改めた線路。幅の違いが分かるでしょうか。このあと、右側の線路も標準軌に改められることになります。
 そして、ここを走る普通列車は今までの機関車+客車に代わって標準軌専用の電車が製造されたのでした。それと同時にスイッチバックは廃止され、今は新幹線や電車がするすると峠への坂を登っていくという、何とも味気ないものになってしまいました。他線での利用が検討されたEF71型電気機関車はその特殊性から他線で使いこなせず、あっけなく廃車に。

 私が学生のころ自転車を列車に積んで日本のあちこち行くのにこれらの線を利用しました。車輛をぎしぎしいわせながら急な坂を登っていく列車に乗って遠い地へ向かうときのわくわくするような気持をまた思い返したりしてます。

 地元の方々は鉄道が便利になりお客が多く来てくれることはありがたいことで、たまに来る旅人が昔が良かっただのあーだこーだ言うのはお門違いだと分かってはいますが、やっぱりこういう手間やちょっとした不便さみたいなものが旅の気持をくすぐるのであり、そんな場所が徐々に姿を消していくというのはやっぱり寂しいものですね。

以下のビデオから画像を拝借しました。
列車通り classics 信越本線 特急あさま(ソニー・ミュージックディストリビューション)
列車通り Classics 奥羽本線 福島~山形(ソニー・ミュージックディストリビューション)

2012-6-10

カテゴリー:旅と山歩き

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