#122
少しづつ、少しづつ。
2013-12-12
12月6日、国会議事堂前
戦後稀代の悪法といわれる「特別秘密保護法」案が、参議院本会議で可決・成立してしまいました。
すでにいろいろなところで言われていますが、この法案の危険なところは、国家の特別秘密を公務員などが外部に漏らしたり、外部の人がこの秘密を知ろうと働きかけたりしたときに、最高懲役10年という厳罰が処せられるということのみならず、その秘密が何であるかを国民が誰も知ることができない、という点にあります。
何が秘密になるかは一応定められているようですが、その条文の最後に「その他」とあり、つまりは特別秘密に指定しようとすれば条文に書かれていなくても「その他」に含めることができますから、運用する官僚の裁量次第で何でも秘密にできてしまうようです。
特別秘密に指定された「秘密」を「秘密」と知らずに外部に漏らしたり、「秘密」と知らずにそれを知ろうと外部から働きかけただけでも法に触れますから、「特別秘密」に該当する可能性があることを恐れて自由に表現や発言ができなくなる可能性があり、別名「平成の治安維持法」とも呼ばれています。
そもそもこの法案、民主党政権時から検討されているようですが(それどころかもっと昔の自民党政権時から、形を変えながらも何回も国会に提出され、その度に廃案にされてきましたが)、今回ばかりはこれまでとは状況が全く異なっていました。
内閣、そして与党の暴走を誰も止めることができませんでした。
国会議員に戦争体験している世代がいなくなってしまったから、ブレーキがかからなくなってしまったのでしょうか。
今年9月に政府が特別秘密保護法について募集したパブリックコメントで、通常1ヶ月のところ異例の2週間という短期間ながらも9万件という驚異的な応募があったそうで、その約8割が反対意見だったといいます。
にもかかわらず、政府はこれらの声を汲み取ろうとはしませんでした。
10月頃から、様々な団体が、この「特定秘密保護法」に対して反対の意を示しています。
9月27日、日本ペンクラブが、法案反対を発表。→http://www.japanpen.or.jp/statement/2013/post_442.html
10月25日、日本弁護士会が、法案反対を発表。→http://www.nichibenren.or.jp/activity/human/secret.html
10月28日、憲法・メディア法と刑事法の研究者265人が、法案反対を発表。
(枠付きの画像はクリックで拡大します。東京新聞はガンバッて毎日のようにこの法案について数ベージを割いて記事を掲載しましたので、今回はそれを羅列してみました。( )内日付は朝刊掲載の日付)
11月28日、「特定秘密保護法案に反対する学者の会」が、法案反対を表明。
12月2日、文化や芸術の分野で活動する有志の「表現人の会」が、法案反対を表明。
12月3日、「特定秘密保護法案に反対する映画人の会」が、法案反対を表明。
たまたま、こんなページも見つけました。「特定秘密保護法案に対する声明の一覧」
日本だけでなく、海外からも懸念の声が発せられています。
12月2日に国連のピレイ人権高等弁務官は2日の記者会見で日本の特定秘密保護法案について「秘密の要件が明確でない。政府がどんな不都合な情報も秘密に指定できてしまう」と懸念を表明。
NYタイムズ紙も11月30 日付の紙面で、特定秘密保護法案は「反自由主義的(illiberal)(下品な)法(案)」と題する社説を掲げたそうです。
自民さん、政権奪取前はTTPだって断固反対だったのに↓
農業団体等の懸念を押し切って参加に踏切りましたが、アメリカにやられっぱなしの様子。↓
自民さん、政権奪取前は脱原発って言ってたのに↓
特定秘密保護法の成立に勢いづいて、原発ゼロ「撤回」です。↓
政権とったら、公約をあっという間に反故にしました。
なのに、公約にさえ掲げなかった「特定秘密保護法案」を、国民の大多数の反対の声をよそに、強引に成立させてしまいました。
「やる」と言ったことをやらず、「やる」と言わなかったことを強引にやる。
国民は、公約を信じたからこそ、あなたたちの党に票を入れたのではないですか?(私は入れてませんが)
「やる」と言わなかったことをやるときは、国民の声をしっかりと聞くべきではないですか?
信任されれば、何をやってもいいのですか?
これは、詐欺ではないのですか?
と、言いたい。
あと3年。改憲は現実味を帯びてきました。
政権とってわずか1年で、こんな法案を強引に成立させてしまいましたから。
あとは、様々な法案を成立・改正させて下ごしらえすれば、改憲など簡単なものです。
きっと徴兵制も夢ではありません。
国防軍ができて、出動せよと言われたときに従わなかったら、最高刑は死刑だと申しております。
今回の「秘密」に関しての、国会での論戦。
実は、今回が初めてではありませんでした。
70年前、今と同じようなことが行われていました。
歴史は、繰り返されるのでしょうか。
法案が成立後、首相は「嵐が過ぎ去った」と早速骨休めのご様子ですが、早速ニュースが。
今度は「共謀罪」だそうです。
「実行行為が無くても、犯罪に謀議に加わるだけで処罰対象になる」のだそうです。
来年の通常国会に提出予定は無い、とのことですが、どうなることかは分かりません。
次から次へと、国民を抑圧する法案を用意して、大したものです。
これらは2020年の東京五輪のテロ対策も念頭に置いているようですが、そういえば、イシバさん。
絶叫の「デモ」も「テロ」と変わらない、と言ってましたね。
(次の選挙で絶叫で演説してたら、「テロだっ!」って言っちゃおうかな〜)
「テロ対策」とは聞こえがいいですが、私たち国民の権利が侵される可能性が十分ある、ということは認識したほうがよさそうです。
私のまわりでも、「今すぐ戦争が始まるなんて、ありえない」という声を聞きます。
それよりも、この法が施行されて真っ先に影響が出るのが、原発問題ではないでしょうか。
現在でさえ情報の出し渋りが問題になり、たびたび「これは芸術作品か?」と思ってしまうような、黒塗りの報告書が提出されていますから、これからは「テロ対策」という名目で、様々な重要な情報が「特定秘密」にされ、これらについての言論は抑圧されてゆくでしょう。
それでも、「政府はそんなことまで、しない」と、お考えですか?
堤未果さんが「アメリカから<自由>が消える」という本の中で、アメリカで地方紙を発行しているマリー・ルドルフさんからもらった、ナチス政権下である牧師が書いたという一遍の詩を紹介しています。
ナチスが共産主義者を弾圧した時、
私は不安に駆られたが、
自分は共産主義者ではなかったので、
何の行動も起こさなかった。
その次、ナチスは社会主義者を弾圧した。
私はさらに不安を感じたが、
自分は社会主義者ではないので、
何の抗議もしなかった。
それからナチスは学生、新聞、ユダヤ人と順次弾圧の輪を広げていき、
そのたびに私の不安は増大した。
が、それでも私は行動に出なかった。
ある日、ついにナチスは教会を弾圧してきた。
そして、私は牧師だったので、行動に立ち上がった。
しかし、その時はすべてが遅すぎた。
(マルチン・ニーメラー牧師)
(
アメリカから<自由>が消える 堤 未果 扶桑社新書
)
特定秘密保護法。
もし、「廃止」したいと思うならば、それぞれができることを、少しづつ、少しづつ。やっていきませんか。
大きなことができなくてもいい。それぞれが、何か小さな「行動」をすれば、大きな力になると思うのです。
友人や家族と、このことについて話せなくても、署名活動に参加する、ツイッターで拡散する、デモにこっそり参加する(声をあげなくてもいいのです)。何でもいいのです。
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法案が成立した、その夜。
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ある与党幹部は、国民から反発を受けるだろうが、年が明ければみんな忘れる、と語ったそうです。
この夜のこと、ずっと忘れないようにしたいと思います。
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