ツブヤキ #191
米国人詩人から見た安保
2015-10-7
日本で長年暮らし活躍するアメリカ人詩人、アーサー・ビナードさん。
先日、アーサーさんの安保法案についての講演を聴きました。
はじめの話題は、9月に安保法案が可決するころに、アーサーさんがどうしても外せない予定でアメリカに戻っていた時の話。
安保法案の行方が気になっていたアーサーさん。
アメリカ滞在中に、日本の安保法案可決の顛末についてのアメリカ国内の新聞記事を探したそうです。
しかし、いくら探しても、どこにも無い。
これほど大騒動だった日本の安保法案の審議・可決について、アメリカでは全く話題になっていなかったそうです。
安保法案は、アメリカが以前から要求していたこと。
日本がアメリカの言うとおりにやってくれたので、ニュースにもならなかったのだろうとアーサーさんは言います。
200年間、戦争ばかりしている国、アメリカ合衆国。
アメリカの憲法では、国会の承認により宣戦布告をしないと、戦争ができないのだそうです。
それが第二次大戦の終戦以降、国会承認による宣戦布告をせずに戦争をしている。
それを可能にしたのは、1951年に施行された安保法制でした。
ではなぜ憲法違反ではないかというと、「戦争」ではないから。
戦争はやらないが「国防」をやる。それも、他国で。
ここまでの説明で、私もようやく気づきました。
このころ米国がやったのと同じようなことを今、日本がやっているのだと。
日本では、次の総選挙で与党が勝利し引き続き政権を継続したら、改憲の道へと突き進んでいくだろう。
まさに私の懸念していたことを、アーサーさんも言ってくれました。
しかし、アメリカでは憲法が死んでいるが、辛うじて捨て去られないでいる。
それに対し、日本ではこの平和憲法が捨て去られようとしている。
アーサーさんが日本に来たばかりのころ、湾岸戦争のイラク空爆の際に、海外から要請され検討された自衛隊のイラク派遣を違憲であるとして憲法が歯止めになったことに衝撃を受けたそうです。
アメリカでは憲法が死んでしまったが、日本では生きている。
それが日本国憲法に関心を持ったきっかけだとおっしゃってました。
<日本国憲法>
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
<日本国憲法改正草案>(自民党)
第21条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
もし憲法が、この自民党草案のように変えられてしまったら、今回のような集会すら開くことはできなくなるでしょう、と。
「公益及び公の秩序を害する目的」であると、なにをもって判断するか。政府の裁量次第なのです。
日本と米国のこのようなつながりについて、私も日本側から見たこれらのことの多くは既に知っていたのですが、アメリカ側から見た状況も同時に紹介してくださったことで、この流れが立体的に捉えられ、理解できたように思いました。
ユーモア溢れ、笑いを取りながら、でも今後の日本の行方について心配しながら話してくださったアーサーさん。
詩人という職業柄でしょうか、使われる言葉が軽やかで、でも大事なところはしっかり伝えられて、親しみやすい言葉の選び方が巧みだなあと思いました。
今の日本国憲法はしっかり保持していかなくてはいけない、と改めて思いました。
関連サイト
・日本国憲法改正草案
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