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ラダック 懐かしい未来

ヘレナ ノーバーグ・ホッジ 山と溪谷社

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 ラダックは北インドに位置する一地方で、文化的にはチベット文化圏にあり、「リトル・チベット」とも呼ばれているそうです。

 著者は言語人類学者として1975年にラダックに入り、数年滞在します。そこで見たものは、西洋文明が入り込む前に日本でも行われていたであろう、つましい生活でした。
 食べることができなくなったものでも家畜に与える、燃料にできないものでも肥料にする、手織りの服を何回も継ぎ当てする、古着してこれ以上着られなくなると泥と一緒に灌漑水路の漏水防止に使用する・・・あらゆるものを完全に使い切り、簡単に捨てない。子どもは村人が皆で面倒を見、老人は死ぬまで敬われ、重要な村人の一員としての役割を果たす。
 コミュニティとしてもある意味完成されたものでした。

 しかし、そんなラダックも、外の世界の文化の流入により状況は変化します。
 観光客は多大な金を落とし、テレビや映画が入り込む。いままであたりまえだったことが、実は外の文化に比べて劣っているのでははないのではないだろうかという疑念。若者たちは劣等感を抱き、西洋映画の主人公に憧れ、そこに展開される暴力シーンをもかっこいいとまねしてしまう。
 ラダックの友人は著者に語ります。「みんなとても貪欲になった。昔はお金は重要じゃなかったが、今じゃ考えることといったらお金ばかりだ。」

 開発の波が押し寄せ、グローバル化されつつある中でラダックで進められた一つの活動、それがラダックプロジェクトです。外の世界からの技術をそのまま適用するのではなく、ラダックで育まれた伝統的な技術を生かした新しい技術の利用。さらに、生態系に適い今後の未来においても持続可能な技術。
 これらの考え方は、すでにいろいろなところで実践されつつありますが、発展の停滞にあえぐ多くの小国ばかりではなく、グローバル化の波で破壊された日本社会の再生のヒントとなるのではないかと思います。







2011-6-25

カテゴリー:世界の文化と歴史

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