#55
津浪と村
山口 弥一郎 石井 正己 川島 秀一 三弥井書店 (2011)
昭和8年に起こった昭和三陸地震で引き起こされた昭和三陸地震津波による被害と復興を調査し、報告としてまとめた昭和18年発刊の本の復刊。
著者は地震の後、昭和10年から宮城県の牡鹿から三陸海岸を沿って青森県の三沢あたりまで、訪れる村をくまなく調査して歩きます。
この昭和8年の津波もかなり大きかったらしく、村ごと流されてしまった様子、親を亡くした子供たちが養子縁組みなどで家系を継続させる様子、高台への集団移住など、津波特有の問題についてを書き記してます。
津波の被害が大きかった反省から、津波が届かない高台への集団移住が一斉になされますが、その多くは失敗してしまうのです。つまり、ほとんどの家がまたもと住んでいた場所に戻ってしまうのです。
それはなぜか。一例ですが、高台に移っても、誰か一人が、あるいは他から移ってきた人が、被害地に仮屋をたててしまう、そうすると漁をするには高台は不便ですから被害地に住んだ人を見て、とりあえず自分も仮屋を建てるかと戻ってきてしまう。年月がたつと仮でとどまっているつもりが住み着いてしまい、いつのまにか被害地は災害前のような元の村の状態に戻ってしまう、というものです。
著者は、「集団移動をした家が一戸でも浜に下りたら、もうそれでおしまいなんです。」を語ったといいます。この言葉が、津波の被害を無くす難しさを言い表していると思います。
3月の地震による津波の被害は言い表せないほど大きいものでした。今度こそこれらの教訓を生かして、悲劇が繰り返されることのないよう願うばかりです。
2011-10-24
カテゴリー:自然環境と災害