#56
SUZU
高木 こずえ 信濃毎日新聞社 (2011)
作家の藤原新也氏が推薦していたので購入してみました。
高木さんは2年ほど前に木村伊兵衛写真賞を受賞していたそうで。受賞後第1弾の作品です。
さーっと見てみると、全体的にぼやけて色あせたような画像が並んでいきます。あとがきによると、6歳まで過ごしていた諏訪で見た光景を取り戻したいということが書かれていました。
記憶というものも、夢のようにはっきりとせず幾分ぼやけたり思い出せなかったりする部分があります。とすると、夢も記憶の一部と言えるのかもしれません。
最近アメリカの大学で、人が動画を見ている血流の変化から、夢を見ている内容を復元するというニュースを見ました。ぼやけたり、いくぶんはっきりしたりを繰り返す画像。この写真集を見て、それを思い出しました。
ここで映し出された彼女の「記憶」は輪郭がぼやけたりうかんだりながらも、その全体像はどこか懐かしさにあふれています。ところどころで差し込まれた三角形や丸は今の彼女の意識の刻印のようにも見えます。そしてそれらの、情報が絞られた写真に、あらゆる人が記憶の奥の方でこの懐かしさを共有できるのではないかと何となく思いました。
2011-10-26
カテゴリー:写真集