#201
【読書】小島一郎写真集成
青森県立美術館 インスクリプト
主に青森県の津軽や下北の風景を撮り続け、昭和39年に39歳の若さで亡くなった写真家・小島一郎さんの写真集。
小島さんの写真の特徴は、何といっても、風が強く冬は寒さ厳しい北の大地の荒々しさを切り取り、大地に根ざしてひたむきに生きる人々の姿を捉えていることでしょう。
日常の大半を農作業に勤しむ農民たち、そして広大な大地。
そのほとんどをモノクロで仕上げ、粗い感触とはっきりとしたコントラストに、この地で生きることの厳しさがよく表れています。
それから多くの写真で印象的なのが、雲。あえて狙ったのか、年間を通してほとんどそのようになるのかは分かりませんが、雲の動きが大きく表情豊かで、その向こうに日の光が様々なトーンで透けて、まるで空が生きているようです。
地方の写真家として津軽や下北の風景にこだわった小島さん。一時上京し、東京での活動を志しますが、失意のうちに北海道に渡り、再び下北に戻ったところで亡くなります。
その手記で、心の迷いのうちに北海道に渡ってしまったことに後悔の念を表しますが、きっと津軽や下北の風景がずっと頭から離れなかったことでしょう。
人々のくらしに寄り添いながら撮った写真からは、見る人の皮膚にチクチクと刺さるような感触の中にどこか温かさが感じられます。
2013-1-5
カテゴリー:写真集