#265
貧乏人の経済学 もういちど貧困問題を根っこから考える
アビジット・V・バナジー エスター・デュフロ 山形 浩生 みすず書房
貧困者の経済について、特にインドや東南アジアを例に、詳細に分析した本です。
貧困者の経済についてはこれまで様々な研究がなされていただろうと思いますが、このようにマクロに分析したものは例が無いようです。
貧困者は、貧乏とはいっても餓死寸前のような逼迫した状況ではなく食費を引いた残金を他のことに使っているとか、無料又は低価格の病気予防制度があっても使わないとか、ちょっとずつ貯蓄しようとすればできるのに誘惑に負けて他のことに使ってしまう、とか、へーそうなの?と思ってしまう意外な事実を拾い上げてくれます。
それはそれで隠れて見えなかった一面に光を当てたといえますが、私は読み終わるまで、何かクールな視線を感じずにはいられませんでした。
もちろん、「貧困」という言葉にひきずられて偏見を含んだままの分析では正しい現状を把握することは難しいでしょう。
でも、貧困者だって人間だからいろいろな事情があるでしょう。冷静な観点で分析することは大切なことかもしれませんが、うまく言えませんが、その背景となる複雑で解きほぐすことが困難な様々な要因の影響との関係はどう考えるのか?
何となく最後まで異和感を感じたのでしたが、読み応えがありつつも地道に現地を調査した内容は興味深いですし、貧困学に一石を投じた本のようですので、ご興味のある方はどうぞ。
2013-7-27
カテゴリー:日本の社会問題/経済・ビジネス