#295
東北の伝承切り紙 神を宿し神を招く
千葉 惣次 大屋 孝雄 平凡社 (2012)
神社や地方の古い民家などに飾られる、白い紙で出来たお飾り。
それが何なのかを今まで知ることもなく、何となく宗教的な意味があるのだろうとは思っていましたが、そこには単なる飾り以上の大きな意味がありました。
「紙」というシンプルな素材で、しかも、一枚の紙を切り刻んでこれだけの素晴しい飾りを作ってしまうのですから。
題材は「大黒天」「恵比寿天」を意味する「俵」「升」「鯛」「扇」や、その他様々な縁起物。
真っ白い紙で(時には赤い紙を組み合わせながら)作られるこれらの「伝承切り紙」は、その多くは色彩的な鮮やかさはありませんが、暗い昔の民家の中では映えて見えます。
「白い」からこそ、神聖さを発揮する。
単なる「切って作った紙の飾り」ではなく、それよりはるかに大きな力を持っている。
神社にほとんど縁の無い私でも、これを見ると神聖な気持になりますから、あまり気に留めない「切り紙」でも多くの日本人の意識の奥底に代々受け継がれているもののような気がします。
この本では主に岩手県の神社で作られた「伝承切り紙」を、写真や解説で紹介してますが、その地域でさえ神社ごとにバラエティに富む表現がなされているのですから、日本中の「切り紙」をいろいろ見てみたらとても面白そうですね。
最近は「伝承切り紙」づくりも高齢化が進んでいるようですが、どうか長く残って欲しいものです。
2013-11-17
カテゴリー:日本の文化と歴史/伝統技術/宗教・信仰