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#315

想い出の街

井上 孝治 河出書房新社 (1989)

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 井上さんは、戦後、福岡で写真屋さんを経営しながら写真家をやっていた方で、井上さんが撮影したような高度成長期以前の古き良き時代の風景の写真は、特に物珍しいものではないかもしれません。

 それにしても、これらの写真から感じる「朗らかさ」は、何でしょう。

 当時は、戦後の復興でようやく国を建すことができてきた大変な時代だったと思います。
 何気ない街中を写した写真の中の人たちに生活としての動きがを感じますし、そして、井上さんが撮った多くの子どもたちの行動は生き生きとして表情はどことなく晴れやかで、眺めているだけで何だか幸せな気持ちになってしまいます。

 井上さんの写真は、随所に遊び心が潜んでいます。だから、思わずふふと笑ってしまう。

 井上さんといえば聾唖者であったという情報が必ずといっていいほどつきまとって、そんなことはどうでもよく井上さんの写真を評価すればいいではないかという声もあり、私もそう思っていたのですが、読み終わってふと気づいたのです。

 耳が聞こえないからこそ、街の風景を、街の人たちを、この目に見える世界を、自らの視点でいかに伝えるか、ということにこだわることに集中できたのではないかと。

2014-3-8

カテゴリー:写真集

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