#323
ブータン、これでいいのだ
御手洗 瑞子 新潮社 (2012)
ブータンといえば、この国が掲げる「国民総幸福」とともに幸せの国として少し前によく紹介されていました。
ブータンについての本としては以前「幸福王国ブータンの智恵」という本を紹介しましたけれども、今回は首相フェローとしてブータン王国の公務員として一年間働いた日本人女性の「ブータン記」です。
何といっても、ブータン政府で働いた方ですから旅行記などでは得られないブータン事情というのも分かり、まるで御手洗さんがブータン一族の一人として生活しつつも、身近な人たちに日本人としての疑問点をぶつけその違いを楽しんでしまうという感じや、ブータン人のかなり俗っぽいところが紹介されているところがとても楽しく感じられました。
この本からに見られるブータン人の主な特徴は、「なんとかなるさ」という楽天的な性格、「楽しいことはどんどんやろう」という快楽的な性格、「自分たちは幸せなんだ」という幸福感に満ちた性格。
しかし、そこにはチベット仏教を底流とした人や生き物を思いやる気持ちと、自国の事情を良く知りその身の丈に合わせた政策を進め国民の幸福を一番に掲げるという国の政策がぴったり合わさったところから生まれているようです。
手帳もカレンダーもほとんど使わない彼らが送る「今を生きる」という生き方は、生きるということそのものを楽しむ術を教えてくれるのかもしれません。
2014-6-9
カテゴリー:世界の文化と歴史