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読書の時間 #380

マーケティングの嘘 団塊シニアと子育てママの真実

辻中 俊樹 櫻井 光行 新潮社 (2015)

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 市場調査で一般的な定量的マーケティングは、必ずしも消費者像を正しく捉えているわけではないのだそうです。
 その前に、定量的マーケティングとは、「通常数百人から数千人を対象にアンケートを実施し、回答を数値化、集計し、分析」(P.20)する定量調査にもとづくマーケティング、とのこと。

 この定量調査がだめなのだと言う。その理由は「回答が不正解である」「対象者が嘘をつく」から。
 アンケートの同じ選択肢を選択しても、回答者のその背景の行動や考えかたは異なるし、他に適当な選択肢が無いから最も近いものを選んでしまうこともある。そもそも人間の記憶はあやふやな部分があり、嘘をつくとまで言わないまでも本当の回答をしない場合もある。

 ・・・うーん、それでも、調査する側としてはそれを想定の上で調査し、それでも最も多い回答が消費者像に最も近いだろう、という判断で参考にしているのだと思うのですが・・・

 しかし、さらに読んでいくと、辻中さんらは「人間の生活行動のほとんどは無意識で行われる」と述べます。
 定量調査ではそれがなかなか拾えない。
 そこで、その無意識で行われる生活行動を解明する一つの方法として「生活日記調査」を挙げています。それはある期間の間、対象者に日記をつけてもらい、そこから浮かび上がった「無意識の行動」に焦点を当ててインタビューするというもの。そうすると、「本人も気づいていないニーズが明らかになてくる」のだそうです。
 生活者の生活動線を追い、その実態をミクロで把握することの重要性を強調します。

 辻中さんらがとりあげた様々な生活者の実態は、なかなか面白い。サブタイトルに「団塊シニアと子育てママの真実」とあるように、団塊シニアと子育てママの生活行動の実態を例に取り上げていますが、「時短カレー」が成功しない理由、和食の伝統を守っているのは子育てママたち、シニア夫婦の生活は「二人のシングル」のミックス、など、思わずへーっと思ってしまう内容ばかり。
 確かにこれでは、定量調査する時にそもそも設問から間違っていた・・・ということもあり得ますね。定量調査に限界があるというのも納得がいきます。

 マーケティングでは生活者からの気づきを得、それを蓄積することが大切、とのことですが、やはり生活者に接近することがその行動を把握する近道のようです。手間のかかることですが。

2015-7-22

カテゴリー:経済・ビジネス

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