#10
チェルノブイリから広島へ
広河隆一 岩波書店
福島でチェルノブイリの教訓は生かされなかった。
チェルノブイリ原発の事故では、ソ連政府は安全と説明し、住民はそれを信じました。ところが数年後に健康被害が現れましたが、ソ連政府は因果関係を認めませんでした。
そしてIAEAによる放射線の健康への影響調査も行われましたが、放射線による健康被害は無いとされました。IAEAは所詮原子力を推進するための機関、原子力の存続の為に調査し、都合のいいように結論を出し、被曝者は置き去りにされました。
片や時代はさかのぼって、アメリカにより広島・長崎に原爆が落とされ、その際にもアメリカによる健康被害の調査が行われました。ここでも調査の結果、後遺症害は無いとされ、調査結果はその後の原爆の存続に利用され、被爆者は置き去りにされたのです。
この本は中高生向けに分かりやすく書かれた本ですが、中身はまさに私たちが知っておかなくてはならないことです。
チェルノブイリ周辺に暮らしていた住民へのインタビューにより、本当の放射線被害の様子やそれに対する政府の対応などがくっきりと浮かび上がってきます。原子力の存続のために国ぐるみどころか国際社会ぐるみで大きな力が働き、被害者をいかに踏みにじっていったかが分かります。
そして福島。
この本は広島長崎への原爆投下による被害とチェルノブイリ原発事故による被害について書かれたものですが、今回の福島の事故でも、この本に書かれたことと似たような状況が見られるのです。
政府や電力会社による情報隠蔽、御用学者による安全キャンペーン、判断能力を失ったマスコミ。
そして数年後に健康被害が目に見えて問題になった時には、政府はその因果関係を認めずに国と被害者たちの長い闘いになっていくのでしょう。まさに「歴史は繰り返す」、私たちはこうした不誠実な態度に改善要求の声をあげるとともに、国が私たちを守ってはくれないことをもっと勉強しなくてはなりません。
2011-6-18
カテゴリー:原爆・原発・原子力/世界の社会問題
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