#111
食卓にあがった放射能
高木 仁三郎 渡辺 美紀子 七つ森書館
まず、この本はチェルノブイリ原発事故が起こった後の1990年に書かれた本です。
1986年に起こったチェルノブイリ原発事故は、当時のソ連だけで被害があったと思われがちですが、放射性物質がヨーロッパの広い範囲に行き渡り、各国で食品が放射能で汚染され、日本でもヨーロッパからの輸入食品の一部に輸入規制をかけていたのです。
ヨーロッパでは植物が汚染され、それを食べた野生動物や家畜が汚染され、汚染された雨水が流れ込む湖の魚が汚染され、人間の食べ物が汚染されてゆくという汚染の連鎖が起こり、様々な規制を実施しました。
また、高木さんは、日本のあまりにも緩い検査体制や規制値にも言及しています。
370ベクレル/kgは、それまで一般人の年間被曝許容量5ミリシーベルトから計算された数値だっだそうですが、1989年にはこれが1/5の1ミリシーベルトに切り下げられたにも関わらず370ベクレル/kgは据え置かれたままで放置されたのだそうです。
衝撃なのは、最終章の「事故にどう備えるか」で「SPEEDIは実際に役に立つことはあまり期待出来ない」と書いていることです。20年も前に書かれたこの本の通りのことが去年その通りになったのです。
この本を読んで、チェエルノブイリ原発事故が起こって当時のソ連・ヨーロッパがその対応で大変な目にあっていたのに、日本は今、その当時のソ連・ヨーロッパとほとんど同じことを再現しているのだなと思いました。つまり、日本はチェルノブイリの事故を教訓とせず、全くの人ごとと思っていたということです。
高木さんは10年ほど前に既に亡くなられた方ですが、まさか自分が調べ、警告したことがそのまま日本で実現するとは夢にも思わなかったでしょう。
2012-3-6
カテゴリー:原爆・原発・原子力/食と農
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