#184
蟻の街の子供たち
北原 怜子 聖母の騎士社
タイトルにある「 蟻の街 」とは、第二次大戦後、廃品回収で生計を立てていた人たちが集まって住んでいたところで、言問橋付近の隅田公園内にあったそうです。
北原さんは当時としては裕福な家庭に育ち、不自由の無い暮らしを送っていたようですが、一般の人たちが敬遠して近づかなかった「蟻の街」に入り、子どもたちの支援を行うことになります。
当時、日本中の皆が貧しかった中でも、この「蟻の街」の人たちは特に貧しく、子どもたちは学校で差別を受け、学校に行くのを止めてしまった子どもたちも少なくなかったようです。親たちも喧嘩や飲酒で生活が荒れ、ますます世間から孤立していきます。
北原さんはその「蟻の街」に飛び込んで、あまりの貧しさに気持が荒廃してしまった子どもたちとともに生活し、次第に子どもたちも北原さんに信頼を寄せ、希望を取り戻していきます。
その様子が新聞や雑誌で取り上げられ、「蟻の街のマリア」と呼ばれるようにもなります。
この話は60年前の実話で、この本は北原さんの書簡と子どもたちの作文で構成され、北原さんは若くして亡くなるのですが、この貧しき人たちとの寄り添い方に悩みに悩む姿が人間臭く、決してこの人は「女神」ではなく自分たちと同じ人間であることに共感を覚えるのです。
また、子どもたちとともに歩んでいく姿は、インドのコルカタで、見捨てられた人たちに寄り添ったマザー・テレサにも重なります。
自分のことを顧みず、人に尽くして一緒に歩もうとする人の姿のいかに美しいことかと思いました。
2012-10-27
カテゴリー:偉人伝・自伝
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