#193

なかむら るみ　小学館

　すばらしいの一言につきます。「おじさん」文化人類学という一つの分野を作ってしまったといってもいいでしょう。

　街中で見かけるいろいろなおじさんを「普通のスーツのおじさん」「偉いおじさん」から「かわいいおじさん」「マスターのおじさん」など約５０種類に分類、微妙な雰囲気をしっかりと捉えたイラストと、その生活背景や行動を鋭く推測した分かりやすいコメントで、そこに紹介されているほとんどのおじさんについて「いるいる！」と言ってしまうこと請け合い。

　私もあと１０年もすればこれら「おじさん」の域に仲間入りしてしまいますが、この本を読むと「おじさんになるのもなかなかいいな」と思ってしまうから不思議です。
　おじさんに嫌悪感をもっている若い女性でも、この分類をマスターすれば、おじさんを見る目が変わり、ついつい観察してお話ししたくなってしまうかもしれません。

　おふざけの本のように見えますが、今の若い世代がおじさんになってしまうとそのスタイルも変化し、今現在のおじさんたちのスタイルは消滅してしまうかもしれません。
　そういう意味では、「21世紀初頭のおじさんスタイル」を記録した、代々受け継がれるべき貴重な資料と言ってもいいでしょう。

　電車やバスで読む時は注意しましょう。
　うっかり吹き出してしまう上に、ついつい周りの「おじさん」を見回してしまいますので。

2012-12-3

カテゴリー：画集・作品集／評論・エッセイ・ルポ