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#370
悪夢の超特急 リニア中央新幹線
樫田 秀樹 旬報社 (2014)
鉄道好きの私としては、本音ではリニア新幹線に「ぜひ乗りたい!」のですが、そんな気持ちも軽く吹っ飛ぶレポート。
JR東海は昨年、突如リニア中央新幹線の建設を発表し社会を驚かせましたが、とてつもない問題を孕んでいるようです。
これまでの鉄道よりも遥かに多くの電力を消費すること、電磁石を利用するために大きな電磁波の発生が予想され健康障害への影響が懸念されること、南アルプスの山々の下を貫くことにより水枯れ及び自然破壊が発生すること、大量に発生する残土処理の問題、9兆円の建設費をJR東海自ら負担するとなっているが、それを超えた場合の対策があいまいであること、など。
それよりも何よりも、この新幹線が本当に必要なのか、ということです。大深度を通るため、ターミナルでの深い地下から地上へのアクセスを含めると、東海道新幹線の利用と比べて数十分しか変わらない。日本の人口が減少傾向を見せる中で、同じく名古屋・大阪を目指す東海道新幹線の他にさらに中央新幹線の利用者も見込めるのか。
もっと深刻なのは、新幹線建設により水脈が断たれ、川が水枯れを起こす問題。水枯れを起こすと、沿線の工業・農業の他飲用水にも影響が出ます。実際に現在の試験線では多くの水枯れが起こっているようですが、対応策としてJR東海が水を戻すことになっているようです、「30年間」は。
印象的だったのは、JR東海の、さらに詳しい説明を求める住民たちへの対応における誠意の無さ、強引さでしょうか。国の後押しで強気になってるのか、計画の甘さや説明不足を指摘されてもうやむやにしてその場を逃れるという態度に、社会的影響にも大きな責任を担う一大企業としてこの振る舞いはあり得る姿なのかと思います。
しかも多くのマスコミはこれらの問題についてほとんど無言、という有様。本書も別の出版社から出版予定だったものが発売直前で中止になったという曰く付き。
2015-5-1
カテゴリー:交通/日本の社会問題
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