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読書の時間 #390

十三億分の一の男 中国皇帝を巡る人類最大の権力闘争

峯村 健司 小学館 (2015)


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 これは貴重な内容ですね。
 大国・中国のトップである共産党総書記の座を巡っての権力争い。

 その内幕を、朝日新聞社の中国総局員として活動されていた峯村さんはしっかりと捉えます。

 まずはアメリカにある中国政府の幹部や社長の愛人が暮らすと言われる「愛人村」、ハーバード大学に通い卒業しようとするころの習近平氏の娘や失脚前の薄熙来氏の息子の生活の様子を追うところから始まり、中国のトップクラスのプライベートの一幕に触れてから、本題である中国共産党内での権力抗争について掘り探ってゆきます。

 中国共産党指導者の世代は、第1世代が毛沢東氏、第2世代鄧小平氏、第3世代江沢民氏、第4世代胡錦濤氏と続き、習近平氏は第5世代に当たるそうですが、このトップの座が党内で淡々と引き継がれたのかと思っていたらそんなことはありませんでした。

 何と、江沢民氏が総書記の時には鄧小平氏が、胡錦濤氏が総書記の時には江沢民氏が、総書記を退きトップの座を降りながらその後も大きな影響力を持ち、当時の総書記はその先代の影響力から逃れられなかったというのです。

 そしてその先代の影響を初めて断ち切ったのが現在の総書記、習近平氏でした。

 当初はその習近平氏が、胡錦濤氏に続く総書記になろうとは誰も予想できなかったというのです。
 多くの人が、30年来トップエリートとして共産党内を上り詰めた李克強という人物が次の総書記になるであろうと予想していました。
 一方習近平氏は、次期総書記の候補に辛うじてひっかかる、言わば「大穴候補」だったようです。
 近年様々な要職を次々と経たそんな習氏が、ついに総書記というトップの座を射止めます。

 中国という国の強さを、改めて感じました。
 これだけ熾烈な戦いを勝ち残る人物だからこそ、13億というとてつもなく多い人口をまとめることができる。
 いや、逆に言うと、これくらいの人でなければ、この国を治めることはできないのだろう。
 今日の栄光が明日も続くとは限らず、いつ明日が無くなるかが分からない世界。

 何とタフな人たちであることか。

 それと同時に、共産党高官や役人など重職に就く人たちの汚職のスケールもまた桁違いで大胆ですね。
 習近平氏はその汚職を一掃する政策を進めていますが、この大国をうまく治めることの難しさがここに現れているような気がしました。

 一読して、改めてこれまで様々なニュースに現れる中国の様子を思い返すと、中国のトップというのは良くも悪くも本気で命を懸けて政治を担っているのだなと感じます。
 ついつい近年の日本の政治家と比べてしまい、ちょっとした絶望感を覚えます。

2015-10-30

カテゴリー:世界の社会事情と外交

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