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読書の時間 #399
みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記
星野 博美 文藝春秋 (2015)
2016-2-25
約400〜500年前のヨーロッパで多く用いられ、やがて表舞台から消え去った中世の楽器、リュート。
学生時代にリュートの音色に魅了された星野さんは、ふとしたことがきっかけでこのリュートを弾けるようになりたいと、先生を見つけて学び始めます。
初めて日本にキリスト教が渡ったばかりの頃、豊臣秀吉も耳にしたことがあるであろう、中世の音楽。
星野さんはリュートを学んでいくうちに、意外な方向へと関心が広がります。
キリスト教徒となり、ローマへと旅立った日本の使節少年たち。
世界へキリスト教の伝導のために派遣された、ヨーロッパの様々な修道会の司祭たち。
キリスト教の布教は望まず、貿易だけがしたかった当時の幕府の思惑。
そして始まった、キリシタンの迫害。
棄教を拒み、次々と生まれた殉教者たち。
星野さんは様々な書物を読みあさり、その歴史を探るうちに、実際にその「迫害」が行われた長崎へ、そして大村へと足を運びます。
さらには、日本で殉教し、聖人となった司祭の故郷、スペインへ。
日本でのキリシタンの迫害について、これだけ生々しい記録があるとは、知りませんでした。
そのあまりの残酷さに、そして自ら殉教を選んだ当時の人たちに、その背景の「なぜ」を追わずにはいられなかったでしょう。
それだけの迫害のあった地にでさえ、当時から残る痕跡はことごとく消しされていたという。そして記憶さえも。
星野さんの長崎・大村の訪問は、巡礼の旅にも見えました。
いや、読んでいる私も、それに加わったような気持ちになりました。
キリスト教撲滅のために、なぜ4万人もの人が、その多くは武士ではない庶民たちが、キリスト教の信仰ゆえに、殺されなければならなかったのか。
残酷な死に方をすると分かっていても、一部のキリシタンたちは、なぜ殉教を選んだのか。
リュートからつながった、半ば忘れ去られた人たちの記憶が、星野さんの手を通してこうして甦ったのは、偶然とは思えないものを感じました。
このことを知ることができて、よかった。
彗星は、その光を弱めながらも何百年もの時を経て再び現れるものなのか。
私も、長崎へ、そして大村へ、巡礼のために足を運びたくなりました。
カテゴリー:世界の文化と歴史/宗教・信仰
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