#27
松井冬子の世界、そしてチビの反応
2012-3-8
世界中の子と友達になれる
先週末、横浜美術館の松井冬子展に行ってきました。
確か昨年の「美術手帖」で紹介されて、興味があったのでずっと行きたかったのですが、埼玉県民の私には湘南新宿ライン一本で行けるとはいえ、横浜は遠い地。まごまごしているうちに会期末も迫ってきたのでありました。
はっきり言って衝撃的でした。
臓物を飛び出させながら何かを求めているように見える裸体の女性、空虚な死の世界の面影を漂わせる風景、自己を失ってしまったかのような動物たち、リアル感との境界を曖昧にされたがゆえに恐怖感を増幅させる幽霊・・・
松井さんが描く絵の世界は、通常の感覚を飛び越えた世界。数々の作品に、私が共通して感じたのは「死の空気」でした。それも、心の内面で展開される、死の空気が漂っている世界。「日本画」という表現手法がさらにその恐怖感に拍車をかけます。
しかし、その「死の空気が漂っている世界」の中にも、見えない陽炎のような「生」を必死に離すまいとする「本能」のようなものを感じ取ることができて、うまく言えませんが、作品を見ている自分の中の内面を取り出されたような、妙な共感を覚え、何か「生きる」ことの本質が描かれているからではないかと思ったりもしました。
ところで、一緒に連れて行ったチビ3歳の反応。
まあ最近は美術館のお供も慣れたもんで、結構本人も楽しんで見ているようですが、今回はちょっと雰囲気が違いました。
最初は「見る、見る」って言ってましたけど、その異様な雰囲気に落ち着かなくなったのか、なんだかそわそわして、「イスに座る―」と言って絵をみるのもそこそこに、休憩用ソファに座ってきょろきょろ。終盤は「もう下(の階)に行くー」とギブアップ気味。
そうですね、生きる希望に満ち溢れた子どもにとって、松井さんの絵のテーマは大きすぎる「壁」だったかも。
でも、私はこれらの絵を見た時の只ならぬ気持ち、ずっと忘れないでしょう。
この疾患を治癒させるために破壊する
松井冬子展、3/18まで。 リンク
松井冬子ウェブサイトhttp://matsuifuyuko.com/
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