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#118

高江に想う


2013-10-17


 沖縄の基地問題に関して、普天間基地の辺野古移設の問題についてはときたま報道されますが、「高江」という地区の問題については(沖縄以外では)報道はほとんどされていないようです。

 どういうきっかけだったかは忘れましたが、この問題についてはブログ「やんばる東村 高江の現状」でその動向が逐一報告され、ずっと気にしていました。


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 沖縄本島北部の山原の中に高江という集落があります。

 その、高江地区に何の前触れも無く、地区を取り囲むようにオスプレイのヘリパッドが突如建設が開始されました。

 農業などを営み静かに暮らしていた高江住民は、生活の場のすぐ側にオスプレイのヘリパッドができるということに驚き、突然現場に現れた工事業者にヘリパッド建設についての疑問をぶつけますが、工事業者らに詳しい説明ができるはずもなく、住民たちは工事現場へのゲートの前に座り込み、ゲートを封鎖します。防衛局に説明を求め、とりあえず説明会は実現しますが、納得のゆく説明は無く、工事だけが強行に進められようとします。

 やがて座り込んだ住民たちは「通行妨害」の罪で国に訴えられ、何とその中に現場に行ったこともない7歳の少女も訴えられるという前代未聞の騒動に発展します。

 一方、沖縄にはアメリカの要望どおりに「未亡人製造機」と揶揄されたオスプレイの配備が決定し、それに反対した沖縄の人たちは、何と普天間基地の各ゲートを封鎖したのです。
  ゲートの前に車を横付けし、座り込み、一夜を明かす。警察が出動し、座り込んだ人々は排除され、車は人を乗せたままレッカー移動され、それを眺める米兵はフェンスの向こうからせせら笑う。

 この様子を琉球朝日放送が取材し、TV放映した番組をまとめたのがこの映画、「標的の村」という映画です。

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 実は米ソが対立したベトナム戦争時代、この高江にはベトナム村という村が建設され、南ベトナムに捕らえられた米兵を救出するという訓練のために高江地区の住民は南ベトナムの住民の役として雇われた、という歴史がありました。

 陸の孤島ゆえに沖縄県内でもほとんど知られることの無かったこの事実を、この映画は明らかにしています。

 そして、高江地区を取り囲むオスプレイのヘリパッド建設により再び高江地区に「ベトナム村」の歴史が再来されようとしています。

 ドアを開けてこちらの様子を米兵が伺いながら低空飛行で高江地区の周りを飛ぶヘリ。
 ヘリパッドの建設とオスプレイの配備により、再び米軍の標的とされようとする高江の集落。


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 オスプレイ配備に反対し普天間基地のゲートを沖縄の人々が封鎖したことについては、私はこの映画を観るまで全く知りませんでした。

 あのアメリカでも、多くの州で禁止されているという、スラップ裁判。この、「国策に反対する住民を訴える」というスラップ裁判を禁止にするという考えは今の日本には無いようです。


 最近、「犠牲の上に成り立つシステム」という言葉がよく登場するようになりました。
 福島第一原発事故以降に頻繁に聞かれるようになったような気がします。
 ある一部の人たちの犠牲のもとに国の繁栄が成り立つシステム。

 誰かの多くの犠牲の上に国が成り立つ。
 そして、沖縄は昔からそうでした。
 アメリカとの関係を良好に保つために沖縄が基地問題で犠牲が捧げられてきました。
 そしてそれらは一向に改善されることなく、延々と続けられてきたのです。

 これだけの工業技術の最先端を担う日本という国でさえ、「人権」となると全くの後進国になってしまいます。
 数ヶ月前、日本の某人権大使が国連で演説し我が国は人権先進国だと述べたところ他国の失笑をかい、人権大使は彼らに向かって「シャラップ!(黙れ!)」と言ったというエピソードがニュースになりました。

 そして、沖縄の人たちの人権は、「国策」のもとに、日本の中でも特に長い間疎かにされてきたのです。

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 住民たちの了解も得ない、いや、事前説明すらしない。そして、反対の声が聞き届けられる場所も無い。結果、工事現場のゲートの前で座り込むことしか方法が無い。
 ヘリパッドの建設により今までの生活が脅かされることについて「私たちがその犠牲になれということですか?」との住民の問いに「そういうことになります」との冷たい返答をする国の代表たち。

 ただ今までの普通の暮らしを守りたいだけなのに、終わりの見えない戦いを強いられることになった高江の人たちの姿から、住んでいる人たちの気持を汲み取ることも無く一方的に強引に事を進める国の態度に怒りを感じました。
 沖縄の外に暮らす私たちは、このようなことを「知らなかった」で済ませていいのでしょうか。同じ「日本」という国に住んでいるのに。

 映画を観ていましたら、館内のあちこちからすすり泣きが聞こえてきました。

 私も、映画の最後のほうで、普天間基地のゲートを封鎖する自動車の中である女性が今にも泣きそうになりながら安里屋ユンタを声高らかに歌っている姿にぐっときました。

 政府はことあるごとに「さらなる日米同盟の強化のために・・・」といいますが、日本はアメリカの同盟国なんかではない、アメリカの奴隷国なのだ、と、映画の中に映し出される国の対応を見てつくづく感じました。

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 約2か月前のものですが、この映画についての新聞記事を見つけました。(PC版では拡大して見ることができます)

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 日本国憲法の中では三権分立を定めていたと思いますが、実際は形ばかりであることが露呈したような記事です。
 司法も立法も行政も住民を守ろうとしないなら、一体誰が住民を守るのでしょうか。

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 映画のパンフレットの裏表紙に載せられた、一遍の詩。

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 高江の空

 この土地は 我等のものだ
 この空も 我等のものだ

 いつの頃からか
 自分の土地に入れば
 アメリカに罰せられ
 次は日本国に罰せられるようになった

 今度はオスプレイが来るという
 毎日、我等の頭上を飛ぶという
 嫌だと座り込んだら
 国に訴えられた

 この国の法律は
 一体誰のためのものか
 この国の司法は
 一体何を裁くのか

 それでもオスプレイが来るなら
 取り返しに行こう
 我等の土地を

 雪崩を打って
 普天間に入って行こう
 ひるむことはない
 我等の土地なのだ
 胸を張って
 先祖の土地を
 誇りを奪い返すのだ
 我等の空を
 戦闘機が飛ばない空を奪い返すのだ

 罰も与えろ
 裁判にもかけろ

 高江の空は 我等のものだ
 高江の空は 我等のものだ

               安次嶺現達

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 高江の戦いは現在も進行中です。
 ぜひブログ「やんばる東村 高江の現状」を見てみてください。

 それから、いただいた手作りパンフレット「Voice of TAKAE」。この問題の概要を分かりやすく書いてます。ぜひ読んでみてください。↓(PC版では拡大したものを見ることができます)

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映画「標的の村」のリンク

 ちなみに「アメリカ軍の駐留は日本の防衛のためには仕方ない」と思っている方は、とりあえずこちらの本を読んでみてください。



カテゴリー:フィルム平和を 安心を 自由を


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