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#125

菊次郎さん


2013-12-31


 今年も残りあとわずかとなりました。(わずかどころか、あと数十分でこの年も終わりです・・・)

 本当はもっといろいろ書きたいことがあったのですけれど、なかなかまとまらなかったり、気持ちが乗らなかったり、時間が取れなかったりで実現しませんでした。

 その中で、3ヶ月も前になりますが、昨年9月府中市で福島菊次郎さんの映画上映と講演会がありましたので、そちらについて簡単に書いて今年は締めようかと思います。

*****

 福島菊次郎さんは報道写真家、現在92歳。
 菊次郎さんのことを知ったのは、福島第一原発事故のときでした。
 菊次郎さんは原発事故により住民が避難した地域に入り、写真を撮られていたのを知ったのですが、90歳にもなる報道写真家がいたのか、とまず驚きました。
 そしてこの映画「ニッポンの嘘」が公開されたのを知り、これまで菊次郎さんが撮影された写真を集めた写真集「証言と遺言」が出版され、「菊次郎さんってどんな人だろう」とずっと気になっていました。


 菊次郎さんは戦時中に青年期を過ごしており、終戦の3年前に20歳で徴兵されます。
 原爆が広島に投下される約1週間前に貨車に乗せられ、日南海岸で下ろされ、爆弾を背負いアメリカ軍が上陸したらキャタピラーで突っ込む作戦でしたが、原爆投下により戦争が終わり、作戦は実行されなかったと言います。

 それからその後、報道写真家としての道を歩み始めます。
 まず、原爆症に悩まされ続けたある男性を、男性が亡くなるまで何年も撮影し、原爆症に苦しめられながら満足な治療も行われず、ほとんど働ける状態ではないのに生活のために無理をしてでも働かざるをえない人たちの存在を世に知らしめました。
 それから、上関原発建設の反対のために翻弄される祝島、安保闘争、成田空港建設に反対する三里塚闘争、自衛隊や兵器産業、原爆投下後の広島の復興の影で抑圧される原爆スラム街、などなど、国策を推し進めるために国民に対してつき続けてきた「嘘」を、暴き続けてきました。

 「表に出ていないものを表に引っ張りだして叩き付けてやりたい、告発したい」
と、菊次郎さんは強く語ります。

 「平和都市広島」でさえ、差別された人たちが暮らした原爆スラムが撤去されて緑地帯に姿を変えたことを、広島の恥部は原爆スラムではなく彼らを差別した平和都市広島だとして、「全国で一番先にあそこを平和都市にした。それは隠蔽するためにしたわけ。肝心なものはどんどん消却していって、その跡に平和公園という夢みたいな、それ自体嘘だったわけで」と言ってしまう。

「根源的にいえば 日本全体が嘘っぱち」

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 講演は映画の内容に近いものでしたが、特に戦時中のことについて多く語られました。


 特攻隊は菊次郎さんが子どもの頃から美化され、上官の命令を押し付けられ、思考を停止させられるという青春時代を過ごしたこと。
 従軍慰安婦は公式な制度として公然と行われ、婦女暴行とともに、それらについて、帰ってきた兵隊からいやというほど聞かされたこと。
 日本軍はやられたことはほとんど発表せず、やったことは水増しして発表していたこと。
 本当は「敗戦」でなければならないのに「終戦」と表現したこと。
 それよりも何よりも、昭和天皇が戦争の責任を取らなかったこと。
 ・・・・
 それらの経験を踏まえて、集団的自衛権や改憲へと動いている現政権の動きについても、「今、戦前に向かって逆行している」と警告されておられました。


 菊次郎さんは、このように報道写真家として社会の悪を暴くことをずっとやってくることができたことについて、
 「悪人に対して私怨を持っていた。だから続けられてきた。」
 とおっしゃっていた。

 いいや、菊次郎さんは、弱者を放っておけない、優しい人だった。
 私はそう思いました。

 菊次郎さんの写真や言葉は、「政府や国というのは、嘘をつくものだ」ということを、改めて伝えてくれます。
 昔からそうだったし、これからもそうだ、と。

 じいちゃんですから、同じ話を何回もするし、いくぶん耳も遠いようですが、話し方ははっきりしているし、何よりもカッコいいですね。精神は若い時のままです。
 菊次郎さんは「報道写真家は、法を犯してもいい」とまで言ってしまいます。確かに。
 法はいったい誰のためにあるのか。法のためではなく政府や国のためでもなく、国民のため、ですよね。国は誰のためにあるのか。そして政府は?
 そこまで問われているような、気がします。

 92歳にしてまだまだ現役で「嘘」に立ち向かっている菊次郎さん。
 それに比べたら、私たちなど平穏に暮らしている者などペーペーです。もっとしっかりし、頑張らねば。



カテゴリー:気になる人たち平和を 安心を 自由を


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