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#52

大地の芸術祭の旅。(そしてオトナの都合であちこち引っぱり回されるムスメ。)

 先日、新潟県十日町市で行われた「越後妻有アートトリエンナーレ」に行ってきました。
 新潟の「十日町」という地方都市、およびその周辺の農村を舞台に、様々な芸術活動があちこちで住民巻き込んで行われる、今となってはすっかり有名になってしまった三年に一度の「大地の芸術祭」でありますが、今回で5回目。ほー、そうでしたか。

 私たち夫婦は第2回を除き全回行ったことになるのですが(初回は結婚前だった!)、当初は3回で終わり、とされていたこの芸術祭も再開の声高く、第4回、第5回と行われるようになったようですね。

 ところで、今までは一泊二日の日程で車で移動して見て回っていましたが、今回はムスメ初参加ということでペースダウンが予想されましたので思い切って二泊三日としました(カミさんはいずれ1週間くらいかけて全部回ってスタンプシートを全て埋め尽くしたいと申しております)。

 かわいそうに、三歳のムスメはオトナの都合で三日間連れ回されましたが、途中幾度と文句を言いながらもしっかりついてきましたよ。
 見た作品の点数も数十点に上りましたが、その中でも印象深かった作品をいくつか。


1) Soil Museum もぐらの館
 「土を体感し、土の魅力を伝える美術館」だそうです。

もぐらの土道
日置拓人+本田匠
 廊下には木チップが敷き詰められ、3階は土の壁がつながってました。温かみを感じます。会場は廃校となった学校でしたが、こんな学校で勉強できたら、楽しいでしょうね。コンクリートの壁なんかよりずっといい。

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土壌モノリスー日本の土・1万年のプロフィール
 越後妻有と日本の代表的な土壌を集め、その断層をフレームにそのままはめ込み、絵画のようにしてます。
 土壌の生成には1m1万年かかるそうで、土壌といってもこうして並べると様々な表情を持っているのがよく分かりますね。
 私たち現代人は重機で簡単に山を崩して造成したりしますけれども、よくよく考えると長い長い大地の歴史をいとも簡単にかき消してしまう重大な行為ですよね。

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2)下条プロジェクト キドラット・タヒミック×小沢剛
 「フィリピンのイフガオ地区と下条地区の交流プロジェクト」の一環の作品だそうです。
 私たちが行ったとき、近所の子どもたちが遊んでまして、そのうちムスメも一緒になって遊び出しました。
 装飾はイフガオの文化から生み出されたデザインなのでしょうか、この背景にあるものをいろいろ想像すると楽しくなります。

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中に入ってくださいと言わんばかりの楽しいデザイン。

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上の写真の右の建物の壁の装飾。

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真ん中の建物の壁の装飾。ムスメも近所の子に混じって遊び始めました。


3)アジア写真映像館
 現代アジアの写真・映像作品の展示施設で、今回は中国と日本の写真家の作品が展示されてました。

妻有物語 榮榮&映里
 妻有の四季折々の里山の風景を撮影したのだそうです。体育館につり下げられた大型の作品は暖簾のような、スライド映写のような、淡く透けながら揺れる写真が、やけに涼し気でした。
 ストーリーを持たせたような組み写真はいかにも、という感じではありましたが。

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ムスメも写真のお姉さんをマネして。

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天と地をつないでいるようです

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「これ、登る!」
振り返って見ると、ムスメは肋木に登り始めてました。まあ、気をつけて。

彼岸は廻る (妻有版「真実のリア王」から) 森山大道
 2003年の芸術祭で上演された「真実のリア王」を撮影した作品だそうですが、森山さんは都市の雑踏ばかり撮っているイメージがあって、里山を舞台とした写真は何だか新鮮です。
 でもどこかちょっと危うい感じがただようのは相変わらずと思いました。

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4)山ノウチ
杉浦久子+杉浦友哉+昭和女子大学杉浦ゼミ
 十日町の中心街に泊まり、次の朝、朝食前の散歩に出ました。商店街のはずれあたりから脇に折れ、石段を登った先の十二社神社にそれはありました。
 人工的なかげろうの向こうにぼんやり神様が見えてきそうな風景。早朝ということもあってなおさら。

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帰りは母子はじゃんけんして「グリコ」「チヨコレイト」「パイナツプル」と言いながら長い石段を下りたのでした。


5)畦の花館 杉浦康益
 これは本当に好きで、ずっと見とれてしまいました。陶で出来た花たち。
 暗闇の中にふっと浮かび、今にも動き出しそうなフォルム、わずかな光を反射し妖しく光る様に目がくぎ付けになりました。

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向日葵?

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椿?

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芍薬?


6)伊沢和紙を育てる 中村敬
 職人さんと協働で、技法の開発から始めたそうで、その浮かび上がる模様が美しく、それぞれが「和紙」という素材を利用した鑑賞作品になっていました。

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障子屏風

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あかり

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あかり

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障子引き戸。色づけは地元の子どもたちが行ったそうです。


7)養蚕プロジェクト インスタレーション作品/光をつむぐ 祈りをつなぐ 古巻和芳+夜間工房

 私たちが毎回楽しみにしている作品、それは「繭の家」と「いけばなの家」でした。
 しかし、「繭の家」は雪により展示していた作品ごとつぶれてしまったそうで、別の空家を「繭の家」として復活しました。
 繭からほどける糸を、柱の周りを回りながら巻いていくこの作品、窓から差し込む光が糸の束に当たり、糸が透明感を持って白い帯となって光っていました。
 蚕という虫が作り出す「絹糸」という芸術作品、自然というのは本当に不思議なものです。 

 残念ながらムスメは手が届かず糸を巻くことはできませんでしたが、「この糸、虫が作ったんだよ」と言ったら糸を撫でて不思議そうな顔をしてました。

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「マユビト」コレクション。蚕の繭に足付けて顔描いたものですが、地元の方たちがつくっているようですね。
今回も一人、購入して連れて帰りました。

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これ、何に見えますか。そう、漢字の「繭」の文字だそうです。


8)蓬平いけばなの家
 ここも毎回楽しみにしているところの一つで、まあ当初から本来の「いけばな」からは離れた作品たちではありましたが、今回はさらに離れてしまったような・・・

モスラの時代 大塚理司
 これ、中に入ると、繭の中に入ったような気分になるのです。柔らかく囲まれて感じる安心感。かつて養蚕で生計を立てていた家が多く存在していた記憶をとどめるものとのこと。

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植物に語らせるもの
日向洋一
 杉の間伐材からつくられる「かなば」を利用しているそうです。
 私は大工さんが使うかんなのかんなくずを思い出してしまいました。
 あれ、見てると、かんなから出てくる時のくずの動きが面白いんですよね。だからこの作品も、そんな動きを感じてしまう。
 日本昔ばなしの舞台となる家みたい、まるで部屋の天井を化け物がにょろにょろと這って動いているようで。

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妻有降臨 かとうさとる
 これ、何に見えます?私は座敷童かと思いました。
 まあ子どもの姿ではなくて化け物みたいですけど。この部屋の主ですね。
 子どもでも植物でも化け物でも、生きている(ように見える)ものがいるだけで、空間は生きてくる。
 作者が意図したのは全然違うもののようですが。

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9)BankART妻有 みかんぐみ+BankART1929+その他50作品
 この建物自体は前にも行ったことがありましたが、小部屋では違う展示をしてました。
 今回は小部屋のインテリアが面白い。
 飾られている絵やカーテンのデザインなんかの安っぽさがいかにも東京の安アパートの部屋風ですが、窓の外に見える自然豊かな風景の中で場違いな感じがいい。

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これ、ヤング荘といって、四畳くらいのアパートの部屋のミニチュア版で、
この中に大人が身を屈めながら入ったり上から覗くと、若いときは平気だった部屋の狭さの感じを極端に感じるのですが、
ムスメは普通に入ってました。幼児タイプ。


10)想像する家 日比野克彦
 想像したアイデアを内外の壁に描いたり消したりできる家、だそうです。
 家の外壁、マグネットシートを貼付けて絵を描いてます。面白いですね。

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ところで、この家の中も、マグネットシートやマーカーで描かれた絵で埋め尽くされてます。
これらはこの家(作品)に来た人が自由に貼ったり描いたりしてゆきます。

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で、やってみました。
 この緑色のシートを切って貼ったのは私の作品。テーマは特にありません。

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この赤いのはカミさんの作品。テーマは、海に浮かぶ船に乗ったムスメ?

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この黒いのはムスメの作品。
 マグネットシートが固くてはさみで切りにくく悪戦苦闘してましたが、なんとか作りました。
誰かの赤いシートのパーツまで勝手に使ってます。
 「これ何?」と聞いたら「宿」と答えてました。
・・・そうね、この時はもう夕方で、ムスメもくたびれたようで、
早く宿に行きたいって言ってたもんね。


11)上鰕池名画館 大成哲雄+竹内美紀子
 これは笑えました。かの名画に、似ているようで、似ていない。でもよく見てみると似てるかも。モデルは皆、地元の人です。
 さて、どんな絵に似ているでしょうか。

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田休祭ーたやすみまつりー

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ダ・ヴィンチ 最後の晩餐

 真ん中のおじさんが神々しく見えます。

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盆栽

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セザンヌ 大きな松の木のあるサントヴィクトワール

 初めてこのセザンヌの絵を見た人が、この写真を見ながら描いた絵だと聞かされても
きっと納得してしまうでしょう。

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宝橋

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ムンク 叫び

 よくぞ絵の人物とそっくりなおじさんを見つけてきました。


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帰り道

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ダ・ヴィンチ モナ・リザ

 きっと皆が知っている名画の女性と同じポーズをとることに緊張したことでしょう。

 極めつけはコレ。

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ぜんまい

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ポロック 秋のリズム

 ・・・ここに来てポロックを持ってくるとは!
偉大なるゲージツ家のアクションペインティングも、「ござ」に「ぜんまい」には勝てません。


 タイトルを見ると分かるように、ただ名画をマネしたものではありません。各写真に解説が書いてありましたが、写真を通して暮らしぶりやエピソードなどを紹介してます。集落の住民一人ひとりが観光大使、といったところでしょう。


12)コロッケハウス 鞍掛純一+日本大学芸術学部彫刻コース有志
 これ、前回の作品らしいのですが、隣の作品を見るつもりで行ってふらりとこちらにも入ったら面白かったので。
 建物全体に金属を吹き付けているそうです。中から外から、全てが青っぽいグレー。
 二階の片側の壁がぽっかり空いてます。

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二階から外を見たところ。開口部に近づくと危険度高いですが、とても眺めがいいですね。

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抹茶のもてなしを受けました。
ここに座って抹茶を飲みながら眺める風景は最高!
部屋がグレー一色なので、外の景色が一層際立って見えます。


13)番外編

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二泊目に泊まった、松之山温泉の旅館「和泉屋」。
職場の元同僚Hさんがたまたま松之山の出身で、紹介してもらって今回2回目。
何と、このお宿では夕食でマクロビオティックの料理をいただくことができるのです。

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上鰕池名画館の階段降りたら、階段の脇の柱に、こんなのが残ってました。
身が引き締まるような、素晴しい言葉ですね。

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帰り際。あるお宅の二階から何かが動いているのが見えたので何だ?と思ったら足でした。
昼寝をしているのでしょうか。のんびりとした一コマ。
 芸術作品に見えなくもない。


越後妻有アートトリエンナーレ2012 9月17日まで。

2012-9-6

カテゴリー:芸術のあたりこどもとともに

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