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#119

未だ闇の中

2013-10-26

 ムスメが我が家の籍に入籍して4か月経ちました。

 私たち夫婦がムスメを里子として預かった時、ムスメは2歳でした。ムスメの実母がムスメの特別養子縁組を希望していましたのでいずれそうするつもりでしたが、特別養子縁組というのは、養子縁組しようとしている子どもの年齢が6歳未満の場合認められますので、私たち夫婦も6歳までに縁組すればいいとその時は思っていました。

 ムスメを預かって約3か月後、東日本大震災が起きました。そして同時に発生した福島第一原発事故により、その約1週間後にカミさんとムスメはカミさんの郷里である宮崎に移りました。とりあえず様子見で宮崎に移った妻子は、あれから2年半経った今も宮崎に住んでいます。

 当初6歳までにすればいいだろうと漠然と思っていたムスメとの特別養子縁組を急いだのには訳がありました。


*****


 もし、ムスメが里子ではなかったら、その勢いで、カミさんとムスメが宮崎に移ったその年か、次の年に私が合流して一家で宮崎で暮らしていたかもしれません。

 でも、それができなかった理由は、ムスメが「里子」であったことにありました。

 里子を里親に委託するというのは、基本的に少しでも里親に定期的な収入があることが前提です。それは、児童相談所が、ある親御さんからその子どもを里親に預けるという仕事をしている以上、実親から預かった子どもを、収入の無い人に預ける訳にはいかないからです。

 つまり、仮に、ムスメが里子のまま、私たち夫婦とムスメが一家で宮崎に移り住んで、夫婦で仕事が見つからず無収入が続いた場合、最悪の場合ムスメは私たちへの里子養育の委託を解除される可能性が少なからずありました。
 それはムスメのためにもどうしても避けたいことでした。

 しかし、里子として育てているムスメと特別養子縁組をしてしまえば、戸籍上私たちの「子」となるので、子の養育の全責任は私たちに移り、収入がいくらあろうが、もう児童相談所は関係無いことになります。

 私が児童相談所に、ムスメとの特別養子縁組について相談したのは、カミさんとムスメが宮崎に移って約1年半くらい経った、昨年秋でした。
 関東の放射能に関する状況が劇的に改善される見込みは当分無いだろうと思ました。カミさんとムスメと関東で一緒に暮らす見込みが私には見えなくなりました。そこで、私が宮崎に移って家族3人で暮らすべく、ムスメの特別養子縁組を急いだというわけです。

 児童相談所の職員さんに相談したときは、特別養子縁組を強く要望していた訳ではありませんでした。
 私が宮崎に移って、家族一緒に暮らしたい。もし、私が宮崎に移ってそのままムスメを里子として育てられるならそれでもいいが、そのためにはムスメと特別養子縁組してムスメが私たちの戸籍上の「子」となるのがいいのではないかと思う、と。

 児童相談所の担当職員さんは親身になって話を聞いてくれました。分かりました、内部に説明してみます、と担当職員さんは私の相談を引き受けてくました。
 約1か月後に、特別養子縁組してもらうのがいいと思います、との返事をもらいました。

 そして、今年始めから裁判所にムスメとの養子縁組の申立てを行い、約半年後にムスメは私たちの戸籍上の「子」となりました。


*****


 しかし、カミさんとムスメが宮崎に移ってはや2年半。1年前のあの時は、私は早く移住して3人一緒に暮らそうと思っていたし、今も気持の底では変わらないのですが、どうも行動に移す気力が無く、気持も揺らいできていることに気づきました。

 もう、原発事故のことなど忘れてしまったかのように、関東に住む人たちは普通に平穏に暮らしています。
 関東では、福島第一原発事故による放射能問題はもう「解決済み」であるかのような、そんな空気。
 何だか私も、彼らと同じような「気」に染まってしまったようです。

 個人的には今でも原発に関する情報収集を怠っていませんし、このまま関東に住み続けることについて、子どもにとってマイナスな面はあってもプラスになる面は無い。そのようなことは頭では分かっているのです。
 でも、一方で、自分で自分を冷静に見て、実はいつまでもこんなことしている自分がオカシイんじゃないか、という気持も芽生えつつあります。

 未だ私は闇の中にいるような気分です。
 一体何が正しいのか、自分の選択を信じていいのか。

 今のまま私一人関東で暮らしても、実質不便は無く、こういう暮らしにすっかり慣れてしまいました。

 去年までは何とかしなければ、という気持があったのですが、今は、そのときの勢いが無くなり、悪く言えばどうでもよくなってきてしまった。今のままでとりあえず生活できているから、もうしばらくこのままでもいいんじゃないか、という気持もどこかにあります。

 しかし、今でさえカミさんとの気持のすれ違いが多々あります。このままでは家族の溝は深まり、放っておくと取り返しがつかなくなるかもしれない。
 二重生活は家計をも圧迫します。
 どこかで決断をしなければなりません。カミさんとムスメを呼び戻すか、私が移って一緒に暮らすか。

 まだしばらく闇から抜け出せそうにありません。



カテゴリー:原発/こどもとともに

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