都市をリノベーション
馬場正尊 エヌティティ出版
建物の寿命が短くなったのはいつからなのでしょうか。
一時期、スクラップアンドビルドという言葉が流行り、さらなる収益効率の向上を目指して、まだまだ使える建物でさえも壊して建て替えてしまう風潮がありました。モノを大事にするという気持ちを日本人はいつから失ったのでしょうかね。
でもこの本では、「二十一世紀は、前の時代につくられ、そして壊された遺産を使う時代なのだろう。」という言葉に表すように、リノベーションという手法が、古い建物や街をデザインだけでなくその利用も新しく甦らせる、様々な可能性を秘めた手法であることを、アメリカ・ヨーロッパ・日本の事例を挙げながら紹介します。従前の建物躯体を利用しながら、朽ちつつあった建物に命を吹き込む作業です。
ここで紹介される物件は、施工前と後の用途が異なるものがほとんどで、単なる改装ではなく、従前のデザインや雰囲気を残すことでそのミスマッチで意外性を狙っています。また、断片的に残る過去の利用の形跡が積み重なって、その建物の記憶として残すことができるというのは、新築の建物では到底マネできないことです。さらには、建物だけでなく、商店街や公共施設、街などにも応用するアイデアが盛り込まれています。
過去と現在をつなぐ、古いものを再利用する、制約の中で自由に泳ぐというのは、建築や街に有機的な感触をあたえてゆくのかもしれません。
2011-8-10
カテゴリー:まちづくり・コミュニティ