ダムが国を滅ぼす
今本 博健 「週刊SPA!」ダム取材班 扶桑社
なぜダムを造るのか。
それは洪水を防ぎ(治水)、また溜めた水を飲用や発電に利用する(利水)ためです。
ところが、このダムをもうやめようという世界的な流れになってきました。ダムは治水・利水という形で私たちの役に立つ一方で、深刻な環境破壊を招きやすいことが分かってきました。
確かに一昔前にはダムを造るというのが治水・利水のために一番最適な方法だったかもしれません。ところが、必ずしもそうではないことがだんだんと分かってきたのです。
著者の今本氏は京大で河川や防災を研究してきた、言ってみれば「ダムを造る側」の人だったのですが、その今本氏が長野県で脱ダムを推し進めていた田中康夫氏に触発され、やがてダムは無駄だと考えるようになります。
国の中でも多くのダムが無駄だと薄々感づいているようだと言います。しかし、巨大な公共事業は、動き出したら止まらない。さすがに近年財政難で計画中止したものがあるとはいえ、まだ多くのダムがあの手この手で理由をつけられて工事が進んでいるようです。
この本では、アイヌ民族の聖地を潰して造ったものの100年間でたまると予測されていた量の土砂がわずか5年間でたまってしまった北海道の「世界最悪のダム」二風谷ダムを始め、多くの無駄ダムを紹介しています。もちろん八ッ場ダムも。
「ダムの治水効果は、きわめて小さく、かつ不確実、しかも環境への影響が懸念される。」
2011-9-14
カテゴリー:政治と行政/科学技術/日本の社会問題