#195
【読書】検察の罠
森 ゆうこ 日本文芸社
検察により罪をでっちあげられた政治家・小沢一郎氏の陸山会事件。
小沢氏の無罪を信じる森さんは、その不自然ともいえる状況からその真相を追究すべく奔走し、検察と対決してゆきます。その様子は、からめられた糸を一本一本ほどいていくよう。
起訴するには無理のある、強引な内容。
国民を欺くかのような、検察という仕事に対して誠実さの無い検察官たちの姿。
森さんが資料を要求しても言い訳をして出さない、出しても要求した内容は出さない、追求しても他の責任にする、はぐらかす。
そして、政府寄りのマスコミの対応。ねつ造ビデオを流すテレビ、ウソを書きたてる週刊誌。
やがて不起訴決定となって出てきた検察審査会。当初でもこれらのメンバーの平均年齢が若すぎてどうも怪しいと言われていましたが、それについてもやはり恣意的な力が働いていました。
驚いたのは審査員を選定するくじ引きソフトについて。森さんがそれのソフトのデモを求めて実施したところ、エラーが出たといいます。調べてみたところ、候補者名簿の中に1600年代の人のデータが混じってエラーになったそうです。そのソフトを森さんが取り寄せたところ、候補予定者名簿は手入力されていたといいます。つまり、恣意的操作が出来てしまう、というもの。
小沢氏は先日無罪が確定しましたが、起訴された当初は鬼の首を取ったかのように小沢氏を攻撃したマスコミも、無罪が確定するとそのニュースの扱いは素っ気ないくらい小さなものでした。
この本を読むと、検察というのはなかなか信用のならない組織だと思ってしまいます。先日、データの記録日時を改ざんした中堅の検察官がやり玉にあがり、検察は何をしているのだという世論もありましたが、この事件はそんなものとは比較にならない。先の検察官の事件は目くらましとしてトカゲのしっぽ切りに利用されたのだろうと思わざるを得ません。
しかしまた、政治家も同様に信用できないという最近の機運の中で、周りから非難されながらも本当の「悪」を追求しようとしている人もいるのだと知ってほっとしたのもまた事実です。
今、私たち一人一人が、社会を見極める目をいかにして持つかが問われています。
2012-12-12
カテゴリー:政治と行政