#218
【読書】狼の群れと暮らした男
ショーン・エリス ペニー・ジューノ 小牟田 康彦 築地書館
世の中には変わった人がいるもので、あの「凶暴」とされる動物、狼と暮らすということをやってのけた人の話。
エリスさんは、イギリスのある野生動物センターの動物の飼育の手伝いに関わるうちに野生の狼と接触、その狼の魅力に取り付かれ、全財産を手放して捻出したお金でアメリカに渡り、ダメもとでオオカミ教育研究センターにて働きながら狼の生態について勉強します。
そこでの狼のとの関係は、あくまでも「研究者」と「研究対象の動物」という関係。研究の手伝いをしているうちに何とエリスさん、それよりも一歩踏み込んだことをします。
それは最下層のメンバーとして狼の仲間入りをすること。
センターの仲間は仰天しますが、エリスさんはこれを文字通り「命がけ」で実行し、狼との良好な絆を結ぶことに手応えを感じます。
その後イギリスに帰り、いくつかの仕事を転々とした後、自分で狼を飼い、狼と暮らしながら研究を続けます。
日本には狼がいませんので、海外の人々が持つ狼に対する恐怖心や憎しみなどについては実感が湧きませんが(あえていえば熊でしょうか)、エリスさんが狼と一緒に暮らす様子からは、狼が自分たちの群れを守るために仲間や家族と強い絆を持って行動する様子、そして何よりも、エリスさんが狼に対して持つ親しみや敬愛が感じられました。
エリスさんの「彼らにとっては家族という単位の安全を守り養うことが最も重要なことだが、この世界を共生している生物に対しては尊敬の念を持っていた。彼らは遊びではなく食うために殺生するが、決して食べられる以上の殺しはしない。」という言葉がとても印象的でした。
人間から見て「凶暴」な動物も、彼らは真剣に生きようとしているに過ぎないのですよね。地球上の動物たちにとって、最も凶暴な動物は他ならぬ「人間」なのだろうなあと思ったりしました。
2013-2-20
カテゴリー:自然科学/自然環境と災害