#250
「福祉」が人を殺すとき ルポルタージュ 飽食時代の餓死
寺久保 光良 あけび書房
昨年1月、札幌市白石区のアパートで40代の姉妹が病死・凍死するという事件がありましたが、驚いたことに白石区では同じようなケースが過去にあり、生活保護を受けられずに住民が餓死するという事件が起きていたとのことでした。
その時の状況を追うとともに、生活保護という「弱者を助ける」という理念とは裏腹に、生活保護申請の際に弱者いじめともいえることが行われていたことを暴いています。
水際作戦という言葉があります。「生活保護に至る前の水際で食い止める」ことだそうです。この本で取りあげられた、子どもを2人育てていた母も何回か面接を受けてはその度にいろいろと注文をつけられて「また来てください」と帰されたといいます。
面接というのも、お金の使い方に注文をつけられたり、家族親族のことを根掘り葉掘り聞かれたり、罵倒されたりと、それだけで気が病んでしまいそうな内容。生活費をタダで貰うわけですから、適正かどうかを調べるのは必要なのでしょうか、そのやり方があまりにもひどい。
また来てくださいと言われても、たいていの人はもう嫌になってしまうそうです。
寺久保さんがある申請希望者の同行をし、その時の担当者とのやり取りが再現されていますが、耳を疑うような会話。これが公の人間が一市民に対してとる態度であろうか、と。
福祉を謳いながら人を助けない現実。
「・・・厚生省の本意は明白であろう。つまり、生活保護費を削り取ること—これが大前提なのである。そのための"不正受給"宣伝であり、「適正化」というもっともらしい言い回しでの現場指導である。」
つまり、ここが元凶でした。
そして、受給資格者の捕捉率の低さよりもほんの一握りの人の不正受給の方が社会的に問題視されている現在においても、この本が書かれた1988年と何ら変わっていないという現実があります。
2013-5-26
カテゴリー:福祉/日本の社会問題/政治と行政