#301
死刑囚90人 とどきますか、獄中からの声
死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90 インパクト出版会 (2012)
この本を読む前に想像していた死刑囚たちの声というのは、自己の過ちに対する反省とこれから迎えるであろう死に対する心の準備、もしくは支離滅裂になり開き直る姿、といったところだろうか、と思っていました。
しかし、この本で圧倒的多数挙げられた声は、結論ありきで進められる強引な捜査、そして憲法で保証されているはずの最低限の処遇が刑務所内でなされていないこと、などでした。
そして驚いたことに、ここに紹介された死刑囚たちのうち、およそ2割は無罪を主張、そして他の2割くらいは、強引な尋問によりやってもいない罪を被せられた、などということでした。
もちろん、これらの死刑囚たちの罪を認めている人たちの多くは、自らの罪を反省し、生きて償いたいと真剣に語っています。また、無実を主張している死刑囚も含め、法についてかなり勉強し、その上で自分に被せられた罪や刑務所内の処遇について疑問を投げかけています。
90人のうちの約2割が、「やっていない。無実だ」と言っているのです。しかもそのうちの多くの人は、その時の自分の行動を詳細に語り、矛盾を鋭く指摘している。
この人たちの、皆が皆「ウソ」を語っているとは、とても思えませんでした。冤罪はありうるでしょう。
この死刑囚たちの言葉からは、検察が「事件の真実を明らかにしようとする」のではなく「立場の弱い容疑者をあの手この手で操り事件解決にうまくおさめようとする」という姿が透けて見えます。
死刑囚たちから見た刑務所や社会。全くといっていいほど日本社会の表に出て来ない、罪を犯した(犯してないが犯したことにされてしまった)人たちに対する閉鎖的ないびつな社会。
ぜひ多くの人に知ってほしいです。
2013-12-7
カテゴリー:日本の社会問題/政治と行政
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