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#303

上野駅の幕間

本橋 成一 平凡社 (2012)

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 東北・上越新幹線開業間際の1982年、上野駅が北の玄関口として賑わっていた頃の最後の時を撮影した写真集。1983年発刊の復刻版です。

 新幹線が開業する前の上野駅には、特急・急行列車、そして夜になると夜行列車がひっきりなしに発着していました。

 上野駅の人間模様を撮ったこれらの写真、実に人間味あふれ、鉄道交通も今のように便利ではなかったけれど実に大らかだった時代の空気をくっきりと写し出しています。

 改札の上にずらりと並ぶ列車案内の看板、様々な服装や荷物を持った人であふれるホーム、ホームに新聞紙を敷いて皆で集いお酒を飲みながら列車の発車時刻まで時間つぶしをしている人たち、故郷への土産なのか大きな荷物を持ち歩く家族、ホームに立ち小便をしているおじいちゃん、仲間の別れを惜しんで万歳三唱で取り囲むサラリーマンたち。まさに旅の起点。

 私も子供の頃親に連れられて東京に遊びに来た時、確かにこんな空気を感じたのをかすかに思い出し、懐かしい気持ちになりました。

 しかしあれから30年。上野駅はみごとに小綺麗な商業施設となり、かつて特急・急行列車が発着したホームのは発着は今はほとんど通勤電車となり、ホームで待つのは無言のサラリーマンばかりとなり、この写真集に見られるような人間臭い場面は深夜の酔っぱらいサラリーマンに見られるくらいになってしまいました。

 そして来年度末に上野〜東京駅の東北縦貫線が開通し、多くの通勤電車が東京駅に乗り入れると、上野駅は単なる通過駅になってしまうのでしょう。

 これらの写真を見ながら今の上野駅を思うと、上野駅は相変わらず人は多いけれどずいぶんとは寂しい駅になってしまった、いや、世の中が寂しくなってしまった、そんな気がします。

2013-12-16

カテゴリー:写真集

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