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#304

アメリカから<自由>が消える

堤 未果 扶桑社 (2010)

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 自由の国、アメリカ。
 と言われてますが、ここのところ、どうも「自由ではなくなってきている」ようです。

 きっかけは、あの9.11。
 世界貿易センタービルやペンタゴンに旅客機が突っ込み、世界中が驚いた、「アメリカ同時多発テロ」事件です。
 アメリカ政府はこの事件をきっかけに、「テロと断固戦う」と宣言し、テロ撲滅と防止のために「愛国者法」を成立し、規制強化をしてゆきます。
 愛国者法とは「テロリズムの阻止と回避のために必要な適切な手段を提供することによりアメリカを統合し強化するための法」(Wikipedia)だそうで、9.11のテロの恐怖に怯えたアメリカの人々は、この愛国者法を支持しました。

 しかし、それから、政府による過剰ともいえる規制と監視が始まりました。
 政府の施策に反対するデモに参加する、団体に参加するだけで、政府により徹底的に調べられ、そのような人たちは「テロ容疑者」としてリストアップされ、飛行機さえ搭乗拒否される。
 空港ではミリ波スキャナーという、全身が丸裸でモニターに写し出されるような、ミリ波レントゲンによる全身スキャナーが、不審物を隠し持っていないか調べるために導入される。電話やFAX、インターネットは監視される。
 「テロを防ぐことができて安全な社会になった」と思っていたら、ある日突然自分が取り調べを受けて、その後息の詰まるような生活を強いられるようになる。
 記者やキャスターが次々と失職、ジャーナリストの逮捕が過去最高となる。一般市民も、政府の施策に反対するような発言をすれば、「テロ容疑」で取り調べを受ける。政府は「政策についてあやしげな発言や情報を知ったら通報してください」と呼びかけ、身近にいる人から通報されてしまう。

 それから、「落ちこぼれゼロ法」という、耳障りの良い名前の法律。
 実態は、「過度な競争の導入から教育格差をつくり出し、何よりも競争からこぼれた子供たちの個人情報が、政府から軍のリクルーターたちに流される」という法律でした。
 落ちこぼれの子供たちの就職の場として軍隊が紹介され、命の危険にさらされる兵士を補充するために彼らがあてがわれる「経済徴兵制」。

 私が別の記事「少しづつ、少しづつ。(モデルは近くにあった)」で、特定秘密保護法のネタに絡めてこの本を紹介しましたが、今の日本の政府の動向を見ると、まさにアメリカ政府の施策の後追いをしているのがよく分かり、恐ろしくなります。

 しかし、アメリカには、明るい話もありました。

 愛国者法についてあまりよく知らなかった市民も事の重大さを知り、「愛国者法」の撤廃を求める草の根運動が全米各都市で広がった、というものです。

 こういった先行事例は、私たちの今後の進むべき道を示唆してくれるはずです。
 私たちはメディアに寄りかかりその情報をただ受け取るだけでなく、「本当にそれは正しいのか?」という視点で周りを見回さなくてはなりません。


2013-12-20

カテゴリー:世界の社会問題

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