#342
田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」
渡邉 格 講談社 (2013)
前回の記事は「猟師の肉は腐らない」でしたね・・・こっちは「腐る経済」です。
最初に勤めたのが有機農線物の卸売をしていた会社だった渡邉さん。
しかしその会社が、産地偽装まがいのことをしていたり、業者からのキックバックに加担しようとしたりと、会社のイメージとは裏腹に何でもアリの現実に嫌気がさし、辞めてしまいます。
辞めて何をしようかと考えたのが、パン屋さん。
いくつかのパン屋で修行を積み、天然酵母パンを作るパン屋さんに。
お店のウリである酒種パンに使う麹菌に天然麹菌を使うことをめざしますが大きな壁が・・・
渡邉さんはこだわりのパンづくりと同時に学んだもの。
それは「経済」でした。
パン屋での修行時代、過酷な労働にも関らず収入が上がらないことに疑問を抱き、調べるうちにパン作りは労働条件が150年前と何らかわっていない事に気づきます。
イーストが生まれ、パンの大量生産が叶っても、そのために労働者の賃金もまた下がってしまうという悪循環。一方でそんな「使い捨て労働力」に投資し利潤と利子で金融を媒介にしてどんどんお金が増えていく「腐らない経済」。
そして渡邉さんは、「利潤」ではなく「循環」と「発酵」に焦点を当てた経済として「腐る経済」を目指します。
パンづくり、というのは奥が深いですね。小麦も、水も、天然酵母も、菌の喜ぶ環境で・・・そうしたらパン屋は田舎に来てしまった。
こだわりのパンづくりの様子と、パンをつくり、売るという経済活動をからめて、平行して話が進んでゆきます。「つくる」ことと「売る」こと、実はどちらも切り離せない。
パン屋さんに限らず、多くの「こだわりのいいものを作っている」お店で参考になると思います。
2014-10-10
カテゴリー:生き方/経済・ビジネス/食と農