読書の時間 #392
横尾忠則 Y字路
横尾 忠則 東方出版 (2006)
ほとんど全て、街の中のY字路を描いた絵です。
住宅街のY字路、商店街のY字路、山の中のY字路、想像上のY字路。
Y字の又の部分にあるのは普通の民家だったり、お店だったり、巨木が立っていたり、石碑が立っていたり。
謎の人物や怪獣が描かれているものもあります。
作風も様々。
いろんなタイプのものを描いてみたかったんでしょうね。
その多くは夜景であり、しかも雨が降っているものもあります。
暗闇の中の、しかも雨が降ったときのY字路というのはこれほどまでにミステリアスなものなのか、と思います。
「Y字路って消失点が二つある。
その二点あることの
謎めいたところに
惹かれていったのかな。」
横尾さんの言葉。
これだけの多くのY字路の絵を見ると、次第に親近感が湧いてきます。
二つの道を分けるように立つ、真ん中の建物。
沿道の建物の中で、最も「目立つ」建物です。Y字路から先の集落の顔といってもいい場所です。
それなのに、その「目立つ」建物たちは、特に見栄えよくしているわけでもなく、無防備な姿をさらけ出します。
「暗夜光路 64の風景」という作品などはたまりません。Y字路の左側の道をちょっと進んだすぐ先もまたY字路になっています。
同じ方向なのに、それぞれの道は違う世界に向かっている。
魅力的な街というのは、こういう「見え隠れ」が多く存在する表情豊かな街なのかもしれません。
なお、私は拝見していませんが、新刊に「全Y字路」「東京Y字路」というのもあります。
Y字路は横尾さんのライフワークなんですね。
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横尾忠則さんの本
・横尾忠則コラージュ 1972-2012
2015-11-9
カテゴリー:画集・作品集
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