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#96

無冠の父

阿久 悠 岩波書店 (2011)



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 阿久さんといえば、昭和歌謡を代表する偉大なる作詞家としていまさら詳しい説明も不要な方ですが、その阿久さんが書いた、阿久さんの父とその家族をモデルにした小説です。

 旅先のヨーロッパで父の訃報を聞いた主人公の「私」は、田舎の巡査を貫き通し、口数も多くはなく、あまりにも実直で、不器用な父の姿を振り返って思い出します。
 まだまだ世間の父親に威厳があった昭和初期から中期の時代、近寄りがたくもその姿を意識の片隅で感じていた「私」の父。その父の行動から父の真意をあれこれ探る日々。

 阿久さんがヒットさせた歌の数々は、その「あまり語らない父」の観察の賜物だったのかもしれません。
 この文章からは決して豊かではなかったけれどそれぞれが精一杯生きてきた時代の空気をじんわりと感じます。今よりも情報が少なかった時代、それぞれがもっと「人」を見つめる余裕があったんだなあと思いました。


2012-1-20

カテゴリー:小説

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