#125
タネが危ない
野口 勲 日本経済新聞出版社 (2011)
野口さんは、埼玉県の飯能で、固定種の作物の種を販売している種屋さんを営んでいます。
固定種というのは「地域で何世代にも渡って育てられ、自家採種を繰り返すことによって、その土地の環境に適応するよう遺伝的に安定していった品種」です。
それに対し、日本で出回っている野菜のほとんどは「F1種」です。F1種というのは「異なる性質のタネを人工的に掛け合わせて作った雑種の一代目。」です。
F1種は、消費者のニーズや生産者の生産の効率性を高めるために改良され、大きさが均一で見栄えが良く収穫が早いので、形や大きさにばらつきがあり収穫に時間のかかる固定種よりも人気が出て、いつの間にか日本の野菜はF1種ばかりになってしまったんですね。
でも、F1種は、種を採ってそれを蒔いても、同じものが出来ません。つまり、一代限りなのです。種メーカーにとってもそれは都合が良い。
野口さんはF1種の技術の遷移に着目し、近年多く採用されている「雄性不稔」という方法が、近年問題になっている、ミツバチが激減していることの原因の一つではないか、という仮説を立てます。するとミツバチを介してその「雄性不稔」の影響が食品の多くにまで広がり、それを食べる人間も、子孫を残していくのが難しくなっていくのでは?との懸念がつのります。
それにしても、日本人は自然な作物すら難しくなってきました。種メーカーの種に日本の食卓を任せきっていいのでしょうか?作物の多様性ゆえに祖先は生き延びてこれたはず。このような流れが私たち自身の首を絞めることにならないことを願うばかりです。
一般的に、固定種はF1種よりも味が良いと言われています。私も野口さんの固定種の種、畑に撒いて野菜を作りましたけど、これに慣れるとスーパーの野菜が工業製品に見えてしまうのが不思議です。
2012-4-2
カテゴリー:食と農/科学技術
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