#143
悲から生をつむぐ 「河北新報」編集委員の震災記録300日
寺島 英弥 講談社
私が寺島さんのことを知ったのは、「余震の中で新聞を作る」というブログでした。そのブログには毎回、東日本大震災で被災した様々な被災地で生きるひとたちの様子が綴られていました。
河北新報社の編集委員である寺島さんが見つめ続けた被災地。地元の新聞社ならではの、被災者たちに密着して聞いた声がここにありました。
津波に襲われたときの生々しい様子、津波が去った後に陥った絶望、そこから一歩一歩足を踏み出していく様子。
寺島さんは足繁く被災地に通ったのでしょう、時間を経て被災者たちが少しづつ変わっていく様子が分かります。寺島さんが地元の新聞社ということで被災者のいろいろな本音も聞くことが出来たかもしれません。
福島ではさらに原発事故も重なります。
津波の被災者と原発の被災者の気持には大きな違いがあったように思いました。
津波の被災者は身内知人を失って、家や街も失って、確かにやりきれない気持はあったけれども、少しづつ復興に向けて前進しようという気持が見えてきます。
一方原発の被災者は、この先放射能という得体の知れないものに翻弄され、どこを向いたらいいのかわからないもどかしさややるせなさを感じながらも、それでも何かをしなければと思っているように見えました。
寺島さんが聞いて歩いた、それでも生きていこうとする多くの人の声、感じた人と人とのつながり。
人間の尊さをじんわりと感じました。
2012-5-17
カテゴリー:自然環境と災害/暮らしと子育て
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