#155
桜のいのち庭のこころ
佐野 藤右衛門 草思社
この本、私の大好きな本なんです。
先日取り上げました「木に学べ」の故・西岡常一さんが伝統的建築の重鎮なら、佐野さんは伝統的庭園の重鎮と言ったらいいでしょうか。
でもこのお二人、本当に似ていると思いました。
経験から得た勘を大事にし、伝統として受け継がれてきた知恵を尊重し、知識の組み合わせではなく全体的に物事を見ていること、そして自然というものに畏敬の念を抱いていること、そして、科学技術とは距離を置いていること。
そして(本の上でですが)言葉の一つ一つに重みがあり、考えにゆるぎが無いこと。
職人というのはこういうものなのですね。人の生き方としてとても憧れます。
ところで、この佐野さん、本職は造園家なのですが、同時に桜守りと呼ばれてまして、京都のお寺の桜を継続して面倒みている方です。
桜についてはかなり造詣が深く、全国各地の桜を見て回り、桜について実にいろいろなことを知っています。桜だけでなく他の木も、植物は皆、人間と同じように見ている。自分が面倒見ている木がどういう状態で、どうしなければいけないか、まるで子どもを見ている親のように。
庭師ですからいろいろな庭の管理の仕事もしているのですが、最近の依頼者はあまり庭にも関心が無く、管理の楽なものばかりを好むと嘆いています。庭というのは手入れをするのではなく、子守りのように守りをしなくてはいけない、と、言います。庭に対する愛を感じますね。
私は仕事で造園の図面をひいたりしているんですけど、佐野さんから言わせれば「学者とかコンサルタントとか妙なものばっかしが出てきてしもうて、実際の作業のことは何もわからへんということですわ」(これは石についての話ですけど)。
ぐうの音もでません。
2012-6-21
カテゴリー:建築・造園/伝統技術
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