#158
ルポ 子どもの無縁社会
石川 結貴 中央公論新社
親による子どもへの虐待のニュースはもうあたりまえのように度々報じられるようになりましたが、消える子どもが増えているという話はあまり聞かないのではないでしょうか。
この本で明らかにされるのは、子どもが社会の一員として認識されずに居なくなってしまうという、あまりにもショッキングな内容。
親が戸籍や住民票を移すこともなく突然居なくなり、子どもも一緒に居なくなってしまう。親の転移先で転居届けが出されないために子どもは社会的サービスを受けることもなく、小学生なら転校の届けが出されることもなく、世間から消えて生活する。
世間から孤立した親との生活で、子どもは放置され、あるいは虐待され、あるいは人知れず死亡するケースも多いようです。
石川さんは最近の子育てをとりまく社会にまで話を広げていきます。
親が隣近所や地域と関わりを持たない、とか、昔なら当たり前と思われていた子どもたちの行動、例えば大声を出して遊ぶとか、そんなことまで迷惑と感じ苦情を呈する、子どもに冷たい大人たちの増加。
社会と無縁になる子どもたちの増加の背景には、やはり社会の変化の影響が大きいということでしょう。子どもを虐待する親を厳しく注意しり、あるいは法で罰しても、何も解決しないということでしょう。
読んでみると、この本に出てくる親たちは、本当に今どきどこにでも普通にいる親たち、それがたまたま様々な環境でそうなってしまっただけ、というように見えました。
つまりこのようなことは「子どもが社会と無縁になること」は決して特別なことではなく、むしろどの親でもこのようにしてしまう可能性があるということ。子育てする親にとっても子にとっても、本当に生きにくい社会になってしまったのですね。
2012-7-1
カテゴリー:福祉/日本の社会問題/暮らしと子育て
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