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#210
この一冊でiPS細胞が全部わかる
金子 隆一 新海 裕美子 石浦 章一 青春出版社
京都大学の山中伸弥さんがノーベル医学・生理学賞を異例の早さで受賞して、iPS細胞が大きな脚光を浴びました。
iPS細胞とは、人間の様々な器官になりうる細胞であり、多くの難病を解決できる可能性を秘めています。
例えば、病気などである臓器の機能が回復不能になった場合、その多くは他の人の健康な臓器を「移植」することで解決する方法が取られるのですが、何せ他人の臓器ですから、拒絶反応を起こす可能性もあるわけです。
iPS細胞の場合、本人の、ある細胞を育てて、取り替えようとする臓器を「作る」ことができるかもしれないのです。これを自分の細胞から作りますから、拒絶反応を起こす可能性は少ないし、臓器の不足という事態にも対応できるかもしれない。
それゆえにこのiPS細胞は「万能細胞」と呼ばれるのですが、このiPS細胞の技術の解明までは様々な歴史がありました。
この本では、人間の細胞の性質から始まり、iPS細胞をつくりだす技術のきっかけとなっていたES細胞について、ES細胞の問題点、山中伸弥さんによるiPS細胞誕生までの話、各国でさらに激化する万能細胞開発の今、そしてこれから、までが分かりやすく説明されています。
全体的に、これらのES細胞、iPS細胞に関する話題の寄せ集め的なところがあり、最近業績詐称で問題となったM氏についても発覚前で正規の業績として掲載されるなどちょっとした危うさも秘めていますが、iPS細胞についての一連の流れを押さえるダイジェスト版として捉えるならば十分にその役割を果たしているのではないでしょうか。
iPS細胞技術のこれからについては、様々な可能性についての夢のような話に突っ走る傾向がややあり、その功罪についてもう少し突っ込んでもよかったのではと思う面もありますが、一般の人がこの話題について大まかに知るのには適した本といえるでしょう。
2013-1-29
カテゴリー:医療と健康
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