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過去の記事

#273

戦場から女優へ

サヘル・ローズ 文藝春秋 (2009)


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 もう5〜6年も前ですが、FMラジオJ-WAVEで毎週しゃべっていた、柔らかくて優しい話し方、そしてとても大人っぽいけどちょっとお茶目な女性。「サヘル」と名乗るその女性、ちょっと興味を持って調べてみたら、イラン出身で、しかも齢も20歳そこそこだと。
 ごめんなさい、話し方から30歳前後かと思ってました。
 そのギャップにびっくりしました。

 その女性がこの本の著者、サヘル・ローズさん。

 彼女の生い立ちについては、幼少時、イラン・イラク戦争中に街が爆撃され、たった一人生き残った彼女がボランティアの女子学生に救い出され、その後日本に渡って育った、というところまでは知っていましたが、この本にもっと詳しく書き記されている彼女の生い立ちは、それはそれは壮絶なものでした。

 彼女を育てる決心をした女子学生は家から勘当され、フィアンセに呼ばれて日本に渡ったものの結婚に至らず、日本語がほとんどできないままわずかな稼ぎで貧しい暮らしの中で彼女を育てます。優しく手を差し延べてくれる人たちがいる一方で、サヘルさんは、いじめに会ったり、普通の家庭とは異なる境遇ゆえ同世代の子どもたちとなかなか交われないなどいろいろな苦労をしますが、高校卒業間際に、知り合いが紹介してくれたラジオのレポーターのオーディションに出て合格、ラジオ出演することがきっかけで芸能の世界へと足を踏み出します。

 こんな苦労続きの人生を歩んできて、よくここまで成長したものだと、率直に思いました。私の人生がこのような境遇だったら、果たしてこんなまともに育っただろうか、と考えてしまいます。

 そして、同じくらいすごいと思ったのが、彼女を育てたお母さん。自分自身は贅沢もせず、彼女のためにすべてを捧げてきました。このお母さんがあってこそ、サヘルさんがこれだけ立派に育ったのでしょうね。
 頭が上がりません。

2013-8-17

カテゴリー:偉人伝・自伝
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