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#277
亡びゆく言語を話す最後の人々
K・デイヴィッド・ハリソン 川島 満重子 原書房 (2013)
世界には7000近い言語があるそうです。しかしそのうちの多くは他の言語に追いやられ、失われようとしています。
ハリソンさんは言語学者として、オーストラリア、インド、パプアニューギニア、ボリビア、シベリアなどを訪れ、絶滅に直面しようとしている言語を話すわずかな人たちから話を聞き、記録しようとしています。それも、できるだけ多く。
ある言語が失われようとするのは、その言語がただ「無くなる」という単純な話ではありませんでした。
ある言語が失われるということは、その言語が表現している様々な文化、智恵など、これまで長い年月培われてきた遺産が無くなる、あるいは見えなくなり忘れ去られてしまう、ということでした。
それらの多くは政治的な顕在的あるいは潜在的圧力で次の世代には引き継がれにくくなります。
例えばアメリカにしても、ロシアにしても、オーストラリアにしても、英語やロシア語といった国の共通言語で統一した方が国を治めるのに遥かに効率がいいためでしょう、公用語という共通言語での教育を進め、たとえそれらの公用語での会話や教育を禁止しなかったとしても次の世代は今の時代の生活に便利な公用語の使用に流れてしまいます。
だから、若い世代は自らの先祖が使ってきた言葉を、学ぼうとしなくなってしまう。
ハリソンさんが調べた多くの少数言語は、その言葉の背景にある文化はとても独特で、他の言語では置き換えるのが難しい言葉や表現も、いくつもあるのだそうです。
それは気象や地形、動植物、資源、その他その地で生活をするのに必要で独自性に発達した、生活するのに必要な情報。そしてそれらにうまく対応して生きていくための、貴重な智恵。そしてそこから生まれた技術、芸術。
ハリソンさんがインタビュー行った人たちの多くは、他にその言葉を使う人がほとんどおらず、現在は自らもその言葉を使わなくなった人たちで、ハリソンさんがその言語についていろいろ尋ねると、彼らは実に生き生きとそれらについて話し始める、といったシーンが多く見られました。
自分が育った文化が失われるというのは、自分の存在が失われるような悲しみというのが大きいのではないか、言語というのはその文化の最も大きな礎なのではないか、と思いました。
2013-9-8
カテゴリー:世界の文化と歴史
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