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#278
わかりあえないことから コミュニケーション能力とは何か
平田 オリザ 講談社 (2012)
コミュニケーション能力。
今でも私はこれには自信が全く無く、とても苦手で、少しでも向上しないかなあと常々思ってきたものでした。
平田さん、演劇をなさっている方なんですね。
菅政権で参与として関わり、例の原発事故についてうっかり本当のことをしゃべってしまいニュースになったことで初めてお名前を知り、どんな人だろうかと思ってました。
私は演劇については疎いのですが、演じることとコミュニケーションとの関連を考えたこともありませんでした。いかに演じるかを考え、そして演じてみて初めて分かり、そこから他の人たちとつながることって、あるんですね。
平田さん、自らの演劇での様々な試みから、コミュニケーションというものについていろいろと思いめぐらせ、この本にまとめました。
昔は「協調型」社会であったが故に、しゃべらなくても阿吽の呼吸で意思を通じさせることもできた。
しかし今はいろいろな価値観や生き方になり、「社交型」社会となって、自らをプレゼンテーションする能力が必要となってきた。
しかし、日本の古い世代の多くの人たちはそんな社会になった、しかし自らはそれに追いついていないのに若者たちにそれを求めながら今までの「阿吽の呼吸」で意思を汲み取る能力も求める「ダブルバインド」が生じている。
コミュニケーションのあり方についても、日本という国は過渡期に来ているのですね。
しかし、「しゃべらないのも表現だ」と言う平田さんの言葉に、ちょっと目から鱗が落ちました。そうか、それも表現のうちなのか、と。
コミュニケーションとは、いかにうまく話してお互い理解するか、と思っていましたが、いかに自らを表現し訴え、分かってもらうか、ということなのでしょうか。
平田さんの言うように、お互いがいままでのように察し合うことを前提として分かり合う時代ではなくなってきました。でも逆に、この「いかに人と分かり合えるようにするか」という個々の試みの面白さをそれぞれ感じられるようになるといいのかもしれません、きっと慣れるまでは多少肩に力の入ることなのだろうけれど。
2013-9-12
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